2021 Fiscal Year Research-status Report
IoT向け小体積無線通信回路の性能限界解明と,最適回路構造の決定
Project/Area Number |
21K21284
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
白井 僚 京都大学, 情報学研究科, 助教 (70910834)
|
Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
|
Keywords | 無線通信 / 磁界結合 / 電磁界 |
Outline of Annual Research Achievements |
小体積センサノードによる効率的な無線通信技術の確立に向けて,無線給電技術と無線通信回路で一部の回路を共用する手法に注目し,研究を実施した.本年度は特に,a) 無線給電用磁界に相乗りすることで無線通信をする方式,b) 電磁波が伝播しづらい水中において,水そのものを電気の伝導体として用いることで,給電と通信を両立する方式,の2点の両方について,理論検討と実機検証を実施した. a) の手法について,無線通信可能距離を高めるためには,1) 交番磁界の周波数を高める必要性があること,2) 送受信コイルのインダクタンスを高める必要性があること,3) 送受信コイルの直流抵抗成分を下げる必要性があること,を明らかにした.一方で,インダクタンスを増やすためには,コイルの巻き数や体積を増す必要があるが,これらを実施すると,寄生キャパシタンスが顕著に増加し,共振周波数が大きく低下する.インダクタンスと,キャパシタンスがトレードオフの関係にあることが,理論に基づいて明らかになった.これらの知見をもとに実機による検証を行ったところ,直径60㎜の小型コイルを送電コイルに使用した場合であっても,最大160㎜程度の距離で通信が可能であることが明らかになった. b) の手法では,水を張った水槽中に設置されたセンサノードへの給電・通信を目指した.具体的に,水槽の両端に電極を設置し,電極に通信信号を兼ねた給電用電圧を印加することで,8mm角のセンサノードに,マイクロコントローラや周辺回路が動作するのに十分な4.78mWのエネルギー供給が可能なことを明らかにした.また,前述の電力供給を行いながら,9600baud以上の速度で無線通信が可能であることを明らかにした.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では,初年度から既存の無線通信方式について,実機検証を行うことを想定していたが,初年度中には取り掛かることができなかった.一方で,電磁波を用いない通信方式については,研究計画を超えた大きな成果を出すことができた.当初,電磁波を用いない通信方式として,近傍界磁界結合を利用した無線通信方式のみを検討することを想定しており,おおむね1年以内に理論検討を終え,最終年度の終了時までに,給電・通信で回路を共用する方式の実機検証を目指していた.初年度の研究を実施している最中に,水中で無線通信と無線給電を同時に行う手法の提案に至り, 令和3年度終了時までに理論検討と実機検証を完了し,国際学会で論文発表を行うことができた.そのため,上記を総合して,研究全体としては,順調に進んでいるものと考える.
|
Strategy for Future Research Activity |
令和4年度の研究では,アプリケーションを視野に入れた,実機検証をベースに研究を実施する.これは,実際のIoTアプリケーションでは,センサノードが小体積であるがゆえに給電と通信の課題が同時に発生するため,それらの解決に対処する方向性からの研究が効果的であるためである.具体的には,令和3年度の研究で完成した1) 磁界結合による通信,2) 水を通信媒体とした通信のほかに,従来の電磁波を使用した無線通信方式をそれぞれ小体積実装し,それぞれ,アプリケーション応用をする際にどのような制約条件があるのか,明らかにする.そのうえで,各方式が理論上どの程度の性能を発揮し得,また実機でどの程度の性能が発揮できたのか明らかにする.
|
Causes of Carryover |
国際学会ACM IUIが当初現地開催ということになっていたが,直前でオンライン開催に切り替わり,旅費が不要になったほか,オンライン開催のため,参加費が大幅に安価になったことが主要因である. 一方,今後のコロナウィルスの流行次第であるが,令和4年度は国際学会への現地参加が可能になる可能性があり,今年度使用しなかった予算分は次年度の学会参加費用としてそのまま利用することを考えている. 他,今年度請求した助成金は,当初の計画通り,実機検証のための実機製作費用や,論文誌投稿費用として使用する予定である.
|
Research Products
(3 results)