• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2021 Fiscal Year Research-status Report

フラクタル性のある複雑ネットワークの臨界的性質と構造的特徴の間の一般的関係解明

Research Project

Project/Area Number 21K21302
Research InstitutionTohoku University

Principal Investigator

藤木 結香  東北大学, 材料科学高等研究所, 助教 (70912517)

Project Period (FY) 2021-08-30 – 2023-03-31
Keywords複雑ネットワーク / フラクタル
Outline of Annual Research Achievements

現実世界の複雑ネットワークの多くには次数の強い不均一性が見られることが知られている(スケールフリー性)。また、工学的分野と生物学的分野における一部の複雑ネットワークには繰り込み変換下における不変性(フラクタル性)が現れることが知られている。しかし、両性質を有するスケールフリー・フラクタル・ネットワーク(SFN)の構造と、パーコレーションや同期現象などのネットワーク上の物理現象の間の一般的関係は未だ明らかになっていない。そこで本年度では、既存の決定論的SFNモデルを一般化することにより、現実世界のSFNが示す多様な構造的特徴を再現することができる決定論的な数理モデルを構築した。このモデルでは、ネットワークを構成する全てのエッジを小規模ネットワークと置き換える操作(逆繰り込み変換)を決定論的に繰り返すことによってSFNを生成する。よって、結果として得られるネットワークの特徴量は解析的に計算することができる。まず、次数分布、ネットワーク直径、スケールフリー指数、フラクタル次元といったSFNの基本的特徴量を解析的に計算し、本モデルを用いることで多様な構造を有するSFNを生成できることを確かめた。次に、ネットワークの最も基本的な構造的特徴である隣接次数相関とクラスター性に着目し、形成条件との対応関係を明らかにした。また、パーコレーション転移における臨界的性質とSFNの構造的特徴との間の関係を明らかにするために、決定論的SFN上のパーコレーション転移の臨界点と臨界指数を導出した。本モデルの具体例としていくつかのSFNを生成し、これらを用いて、次数分布、フラクタル次元、隣接次数相関がすべて同一であっても、クラスター係数の違いによってSFN上のボンド・パーコレーション臨界点および臨界指数の値が異なることを示した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究課題では令和3年度において多様な構造的特徴を有する決定論的SFNモデルの構築を行う計画であったが、この取り組みについては十分達成することができたと考えている。スケールフリー性の起源は、新たなノードの参入によってネットワークが成長するときに、次数の高いノードがより優先的に新たな隣接ノードを獲得する優先選択則にある。また、逆操込み変換を十分な回数繰り返したネットワークはフラクタル性を発現する可能性がある。本年度では、優先選択則と逆繰り込み変換を組み合わせたアルゴリズムによって、多様な構造的特徴を有するSFNを生成する一般化SFNモデルを構築できた。また、逆繰り込み変換を決定論的に実行することによって、本モデルは生成されるSFNの性質がすべて形成条件によって決定されるようなモデルとなった。これにより、生成されるSFNの特徴量を解析的に計算し、構造的特徴と形成条件との対応関係を明らかにすることができるようになった。さらに、与えられた構造的特徴を有するSFNを生成するための形成条件の選定が可能となった。また、本モデルによって生成されるSFNに対して、ネットワーク上における最も基本的な物理現象であるパーコレーションの臨界点および静的臨界指数の解析的な計算方法を示すとともに、複雑ネットワークに見られる多種多様な構造的特徴の中でも最も基本的な構造的特徴である隣接次数相関およびクラスター性と本モデルの形成条件との間の対応関係を明らかにした。これにより、形成条件によって決定する隣接次数相関およびクラスター性と、パーコレーション臨界点および臨界指数との間の一般的関係性を明らかにすることができた。以上のことから、本課題研究はおおむね順調に進展していると判断できる。

Strategy for Future Research Activity

これまでの研究によって、多様な構造的特徴を有するSFNを生成する一般化モデルが構築され、与えられた構造的特徴を有するSFNを生成するための形成条件の選定も可能となった。令和4年度では、令和3年度に構築した一般的SFNモデル上の同期現象における臨界点および臨界指数を数値計算によって求める。この目的のため、一般的数理モデルを用いて、隣接次数相関の正負とその強さ、およびクラスター性の強さの異なるSFN集合を生成する。多様なSFN集合に対して、臨界点、静的臨界指数および動的臨界指数を数値計算より求める。このとき、平衡状態における秩序変数を求める必要があるが、一般的にフラクタル系における平衡状態への緩和時間は極めて長い。そこで、系が平衡状態に至るまでの緩和過程から臨界点・臨界指数を求める手法である非平衡緩和法を用いて、計算時間の大幅な短縮をはかる。得られた臨界点・臨界指数を整理し、隣接次数相関の正負とその強さ、また、クラスター性の強さと、同期現象の間の一般的関係を明らかにする。さらに、構造的特徴への依存性および臨界的性質について、パーコレーション臨界点および臨界指数に対して得られた解析計算結果と比較し、SFN上のパーコレーションと同期現象の間の関連性について考察する。関連性がみられた場合は、解析計算の結果をもとにSFN上の同期現象における臨界的性質の数学的背景を考察する。

Causes of Carryover

学会参加および他の研究機関に所属する研究者と議論を行うための出張を予定していたが、コロナウイルス感染拡大のためにたびたび形式がオンラインへと変更され、旅費としての経費の使用を抑えることができた。また、本年度の研究計画では、スケールフリー・フラクタル・ネットワーク上のボンドパーコレーション過程における臨界点および臨界指数の導出を計画していた。もしも解析的な導出が困難であるとわかった場合は、解析計算に代わり数値計算を行うことが想定され、そのために新たな計算機の購入が必要となる可能性があった。研究を進める中で、ボンドパーコレーションの臨界点および臨界指数は解析的に導出できることがわかったため、新たな計算機の購入は、令和4年度研究計画にある同期現象における臨界指数の導出段階まで持ち越すこととした。

  • Research Products

    (2 results)

All 2022 2021

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] A general model of hierarchical fractal scale-free networks2022

    • Author(s)
      Kousuke Yakubo, Yuka Fujiki
    • Journal Title

      PLOS ONE

      Volume: 17 Pages: -

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0264589

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Presentation] MEMB法によるネットワークの反復的繰り込み2021

    • Author(s)
      藤木 結香
    • Organizer
      ネットワーク科学セミナー2021

URL: 

Published: 2022-12-28  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi