2022 Fiscal Year Research-status Report
Study on transmission process of one's own voice through air- and bone-conduction pathways
Project/Area Number |
21K21314
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
鳥谷 輝樹 金沢大学, フロンティア工学系, 博士研究員 (00911223)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | 聴覚フィードバック / 骨導音声 / 伝達特性 / 自己聴取音声 / 側頭部振動 / 外耳道内放射 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,聴覚フィードバックにおける気導・骨導経路による自己聴取音声の伝達・知覚過程を明らかにすることである.その具体的内容は次の2点である.① 実際の発声や人工音励振を用いて,発話器官から聴覚器官に至る骨導伝達系の周波数特性を物理的測定により明らかにする(1年目).② 得られた伝達特性を用いて骨導音声を模擬し,自己聴取音声の聴感を満たす気導・骨導音声の混合レベルの決定により,気導・骨導経路の各々の知覚的寄与を明らかにする(2年目). 実施2年目として,伝達特性の安定測定のための基盤整備を実施した上で,気導・骨導経路の各々の知覚的寄与の検討を実施した.最初に,生体ノイズや暗騒音の影響を受けずに,耳を塞ぐことなく発話時の外耳道内放射音や頭部振動を観測する手法について検討した,実験協力者5名を対象に,イヤーマフや遮音壁を使用して外耳道内へのノイズの混入を防ぐ試みを検討したが,結局のところ外耳道内を開放すると十分なS/N比を確保できないことが分かった.このため,当初の計画通り外耳道内を閉塞して骨導音を観測した後,閉塞による特性変化の推測値を補正することとした.次に,得られた伝達特性を用いて骨導音声を模擬し,自己聴取音声の聴感に近づく模擬骨導音声の混合条件を決定した.実験協力者7名による主観評価実験の結果から,骨導経路全体で伝達される音声のパワーは気導経路とほぼ同程度であり,その上で外耳経由および中耳以降で伝達される骨導音声のパワーは互いに同程度であることが示唆された. 現状として,上記①および②の検討それぞれで示唆に富む成果が得られたものの,当初予定していなかった所属機関変更が生じたことにより,計画に記載の実験協力者20名を確保できなかった.この経緯から,実施期間を1年間延長し,追加の実験協力者を対象とした実験を実施する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2年間の研究計画を通して一定の進展があったものの,申請時の計画に対して約8か月程度の遅れを伴っている.その理由については次のとおりである. 1年目に課題として残された「伝達特性の安定測定のための基盤整備」を、2年目の序盤2ヵ月の間に実施し,その後に当初2年目に予定していた「混合比の主観評価実験」の実施を開始した.後者の取り組みにおいて,当初予定していなかった所属機関変更が生じたことにより,新所属機関において実験協力者を再度募集することとなった.当該募集機関においては,感染症下での情勢変化が完全に落ち着いたとは言えず,当初全20名確保予定であったが学生7名のみの人員確保に留まってしまった. 上記の限定されたデータ収集ではあったが,「主観評価の過程において骨導伝達特性の個人性を無視できない可能性」を発見するに至った.このことを十分なデータ数を以て検討するにあたり,さらに13名を対象とした主観評価実験を実施する必要があると考えており,この遂行には約6ヵ月の期間を必要とする. 以上の理由から,当初の計画に対して合計8ヵ月程度の遅れを伴っていると結論づけた.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では上記の経緯から,実施期間を次年度にわたり延長することとする.実施3年目については,「主観評価の過程において骨導伝達特性の個人性を無視できない可能性」を検証することを目的に,1年目の取り組みに準拠した骨導伝達特性の簡易測定を,現所属期間の新規協力者5名程度に対して実施する.その後,当初計画で予定していた「混合比の主観評価実験」を,上述の新規協力者5名を含む全13名の協力者に対して実施し,最終的には自己聴取音声の伝達過程の普遍性と個人性の両面を明らかにする予定である.
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Causes of Carryover |
申請段階では予定していなかった所属機関変更が伴ったことにより,前項で記載した通り実験協力者を伴う測定や実験に未実施分が生じている.延長申請をした追加年度において,新たに実験協力者を確保して測定・実験を行ない,謝金を支払う必要がある. 当初計画では,測定・実験で得られた結果を国内学会およびジャーナル論文で発表することを計画していたが未了となっている.追加年度で実施する測定・実験の成果をまとめ,国内学会およびジャーナル論文で発表することを計画している.
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