2023 Fiscal Year Research-status Report
都市はマダニ媒介感染症リスクを高めるか?-感染症対策と環境保全の両立を目指して-
Project/Area Number |
21K21335
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Research Institution | Hokkaido Institute of Public Health |
Principal Investigator |
松山 紘之 北海道立衛生研究所, その他部局等, 研究職員 (80911396)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2025-03-31
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Keywords | ニホンジカ / 宿主 / 景観 / マダニ群集 / マダニ属 / チマダニ属 / ライム病 / リケッチア |
Outline of Annual Research Achievements |
都市化は地球表面の最も重要な人為的変化のひとつであり,地球レベルで生物多様性に対する大きな脅威となっている.このような都市化の影響は,人獣共通感染症の病原体を媒介・保有するマダニ類もその例外ではない.そこで,本研究では,都市化がマダニ相へ及ぼす影響を評価するために,札幌市の都市公園と山地帯において,マダニ相を調査し,比較をした.2021年から2023年にかけて5月と10月の年2回に1地点あたり約30分間2名にて旗ずり法にてマダニ類を採集した.都市公園ではヤマトマダニ99個体,シュルツェマダニ7個体,パブロフスキーマダニ2個体,タヌキマダニ3個体,キチマダニ194個体,オオトゲチマダニ369個体,フタトゲチマダニ1個体,ヤマトチマダニ1個体が採集された.一方,山地帯では,ヤマトマダニ696個体,シュルツェマダニ38個体,パブロフスキーマダニ8個体,タヌキマダニ2個体,キチマダニ252個体,オオトゲチマダニ718個体,ヤマトチマダニ1個体が採集された.ヤマトマダニ,シュルツェマダニ,オオトゲチマダニが都市公園より山地帯で多く採集された傾向がある一方で,キチマダニは山地帯より都市公園で多く採集された傾向があった.このような傾向の違いは,都市公園に大型哺乳類が定着していないことで,マダニ類の生活環に大型哺乳類が重要な宿主となるマダニ種が都市公園には生息しにくかったためであると考えられる.さらに,マダニ類は種ごとに媒介する病原体種が概ね異なる傾向にあることを踏まえると,このような違いは都市公園と山地帯ではマダニ媒介感染症の種類ごとに感染リスクが異なることも示唆される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査地点の選定が完了し,野外検証に必要な調査地点数を確保することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度も,引き続き調査を継続する。得られたマダニサンプルは、病原体の保有状況の把握を目的としたPCR及び遺伝子解析を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
マダニ類の採集は雨天時及び雨天直後に実施できないことから,調査予定日の多くが雨天により中止を余儀なくされた。また,所属機関の性質上,新型コロナウイルスの検査対応などもあった。これらの理由により,次年度使用額が生じた。 次年度では,野外調査及び,遺伝子解析と本研究の成果発表のための学会発表や論文の英文校正費及び掲載費に充当する。
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