2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K21344
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
森本 裕也 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 理研白眉研究チームリーダー (60913572)
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Project Period (FY) |
2022-02-18 – 2025-03-31
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Keywords | アト秒電子ビーム / 超高速科学 / 電子ダイナミクス / 電子線回折 / アト秒科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、アト秒域の極めて短い時間幅を有する電子ビームを利用した超高速イメージング手法の開発を行う。初年度である2022年度は、今後行う実験の準備として、独自のアト秒電子ビーム装置の設計および開発を行った。高いコヒーレンスを有する電子ビーム発生のため、タングステン針を線源とする冷陰極電解放出型の電子銃を製作した。また、電子銃内でのビーム強度の低減を抑え高い電流値を得るために、電子ビームの飛行軌道シミュレーションを行って設計された複数の静電レンズを電子銃に組み込んだ。電子ビームを電子銃から試料まで導くために使用する磁場レンズも飛行軌道シミュレーションを行って設計・製作した。サブフェムト秒電子線イメージングのためには、電子ビームの時間変調用と測定用の2つの試料を高い精度で位置決めする必要があるが、本課題では、3方向の位置および2方向の角度を精密に制御できる試料ステージを構築した。 さらに、電子ビームの時間変調およびサブフェムト秒ポンプ・プローブ測定のための中赤外レーザー光源の開発も行った。高強度中赤外光発生のため、波長1マイクロメートルのフェムト秒パルスを励起光とする2段光パラメトリック増幅器を開発した。増幅用の非線型光学結晶にKTA結晶を用いることで、15 Wの1マイクロメートル励起光に対して、1 Wの3.4マイクロメートル光を得ることに成功した。独自の自己相関計測器を用いることで、パルス幅が180フェムト秒であることが分かった。以上の2022年度の成果によって、2023年度以降に実施する実験の準備がおおむね整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の研究開発によって、超短パルス電子銃、電子線用レンズ、試料ステージなど、本研究課題の実施に必要な電子ビーム装置の大部分が開発された。さらに、6%を超える高い励起光からの変換効率で中赤外フェムト秒光を発生させることができた。それらの結果、サブフェムト秒電子線イメージングを実現するための準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は当初の予定通り、アト秒電子線回折法の実現に向けた研究開発を行う。アト秒電子線回折法の実現により、物質の中で電荷密度が超高速で変化する様子をサブフェムト秒・オングストロームの分解能で可視化する。それと並行して、2024年次の実験に必要となる、低速電子用の超高分解能エネルギー分析器の開発を行う。また、レーザー光源開発も更に推進し、10マイクロメートル前後の長波長赤外光の発生にも取り組む。
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Causes of Carryover |
2022年4月に発注し、本来2022年8月までの納品の予定であった製品1点が、半導体関連部品不足の影響を受け、2022年度末までの納品が不可能となった。そのため、次年度使用額が0円より大きくなった。当該物品は、2023年度初旬に納品される予定である。
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