2022 Fiscal Year Research-status Report
Comprehensive Research on Sufism: Through Metaphysics, Literature, Music and Ritual
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21KK0001
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東長 靖 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (70217462)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤堀 雅幸 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (20270530)
鈴木 麻菜美 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特定研究員 (20911134)
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Project Period (FY) |
2021-10-07 – 2027-03-31
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Keywords | スーフィズム / トルコ / メヴレヴィー教団 / リファーイー教団 / 音楽 / ルーミー / ケナン・リファーイー |
Outline of Annual Research Achievements |
知的エリートによる神秘主義哲学と、民衆による神秘主義教団の儀礼の分析とが、別々に行われてきたスーフィズムを、より総合的にとらえ直すために、両者の間に、文学(とくに詩)と音楽を研究の対象として設定することにより、ホリスティックなスーフィズム理解を目標として、本研究は始まった。 本研究では、A. 思想班、B. 文学班、C. 音楽班、D. 儀礼班の4班を設け、各々、論理的言語としての神秘主義哲学(A)、象徴的言語としての神秘主義詩(B)、真理を音で表す音楽(C)、同じく身体動作で表す儀礼(D)を中心に検討を進める。但し、これら各班が別々に研究を進めたのでは、従来型のディシプリン研究と何ら異ならない。そこで本研究では、これら4つの要素をすべて有する事例として、メヴレヴィー教団とリファーイー教団を取り上げる。メヴレヴィー教団の開祖ルーミーも、20世紀のリファーイー教団導師リファーイーも、神秘主義思想家、神秘主義詩人、スーフィー音楽の育成者を兼ねていたためである。 2年目にあたる令和4年度は、現地打ち合わせ・現地調査・国際発信・社会還元を実施した。この内、国際発信に関しては、制限字数の関係から次の「進捗状況」で説明する。 現地打ち合わせ・調査に関しては、当初の計画通り、メヴレヴィー教団を対象を対象として、11月に約1週間、実地調査を実施した。具体的には、1.共同研究のパートナーであるウスキュダル大学スーフィズム研究所メンバーとの研究打合せ、2.コンヤ市に赴いてのメヴレヴィー教団本拠地でのインタビューおよび儀礼の参与観察、3.イスタンブル市内のその他の教団における参与観察を実施した。 また、研究成果の社会還元にも努めた。具体的には、Sophia Open Research Weekにて11月12日に連続市民講義「スーフィズムいみる音と身体の技法」を行い、東長・赤堀・鈴木がそれぞれ発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度・来年度は、トルコでは政教分離後もトルコ文化遺産の華として保護育成が続けられているメヴレヴィー教団に焦点を合わせている。本教団の故地であり、現在も本部を構えるコンヤ市を訪れ、当代理事長代理のエセン・チェレビ女史と夫のオスマン・ベイから親しく聞き取り調査を行った。夜には、観光目的化されていない宗教儀礼としてのセマー(旋回舞踊)儀礼を練習する場を、非公開の場で観察する機会を得た。そのスピードと、舞踏家の発する激しい息遣いは、これまで演壇の向こうでのパフォーマンスを見ていた時にはまったく想像できないものであった。また、この日公開の舞踏の指導者であるナイル・デデへの長時間にわたるインタビューも実施しえた。これらは映像に納めるとともに、文字化して記録にも遺している。 コンヤ市調査に先立ち、11月15日には同協力者のウスキュダル大学関係者と今回の調査の打合せを行った。翌16日には、イスタンブル在住の主要スーフィー教団長およびウスキュダル大学理事長と意見交換を行った。17日には、比較参考のためにジェッラーヒー教団のズィクル(儀礼)を参与観察した。最後に再びウスキュダル大学スーフィズム研究所関係者と会い、次年度の研究計画について確認し、再開を約して別れた。 本年度特記すべきは、この国際共同研究と同時並行の形で、若手共同研究者の鈴木麻菜美の企画立案した国際音楽学ワークショップが実現したことである。これは、2022年7月2日に“The Encounter with Religious Others through the Music and Musician in Islamic World”と題してオンライン開催され、国内外5名の研究者が研究発表を行った。その成果はKyoto Bulletin of Islamic Area Studies, vol. 16の巻頭英文特集に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画調書に記したとおり、研究計画は順調に進展している。本格的なメヴレヴィー教団調査の2年目である令和5年度は、研究分担者3名がトルコに8月に赴いて現地調査を行うとともに、日本側・トルコ側合わせて10名が本共同研究に基づく研究発表を行うジョイントセミナーを、ウスキュダル大学にて8月末に実施することとしている。 研究代表者は、本国際共同研究Bと並行して、基盤研究A「非アラブにおける穏健イスラームの研究」(22H00034)を、トルコを調査地の一つとして実行しているため、本年8月の現地調査はこの二つの調査を相前後して実施する予定である。トルコにおける穏健イスラームの一つの核がスーフィズムであり、それが国際共同研究の焦点でもあることから、同じ対象を別の視点を同時に用いつつ複合的に研究する手法の解発を目指したい。
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Causes of Carryover |
今年度は実地調査1年目であり、ある種のパイロット調査の性格も持っていたことから、期間を1週間と短めに設定し、研究分担者3名のみをトルコに派遣することとした。2022年11月の現地での何度もの話し合いと共同調査により、進むべき方向が具体化したため、次年度はより長期(約2週間)を設定したうえで、現地調査を実施するとともに、第一期2年間の研究テーマであるメヴレヴィー教団における神秘思想・文学・音楽・舞踊の結びつきに関するジョイント・セミナーをイスタンブル市ウスキュダル大学で開催することとしている。このジョイント・セミナーには、本国際共同研究のコアメンバーである日土3名ずつの研究者に加えて、双方から2名ずつの大学院博士課程在学者に発表を行わせ、次世代育成に資することとしている。滞在期間の長期化と、若手院生の派遣の二つの要素を今年度に織り込んだため、その分の予算を繰り越すことにした。
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Research Products
(26 results)