2021 Fiscal Year Research-status Report
Comparative Legal Studies toward the Reconstruction of Contract Law and Consumer Law for Digital Transactions
Project/Area Number |
21KK0018
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
川和 功子 同志社大学, 法学部, 教授 (70295731)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 恒雄 独立行政法人国民生活センター(商品テスト部、教育研修部), 国民生活センター, 顧問 (20127715)
芦野 訓和 専修大学, 法学部, 教授 (40298039)
馬場 圭太 関西大学, 法学部, 教授 (20287931)
永岩 慧子 愛知学院大学, 法学部, 准教授 (90805582)
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Project Period (FY) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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Keywords | 消費者法 / 契約法 / デジタル・コンテンツ / デジタル・サービス / 民法 / イギリス法 / アメリカ法 / ドイツ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はデジタル・コンテンツ及びデジタル・サービス供給契約における期待される履行の水準、救済等についてEU法、英国法、ドイツ法、日本法を踏まえた比較法的研究行った。この研究をもとに、2021年6月の比較法学会のミニ・シンポジウムで「EUと日本におけるデジタル・コンテンツ及びデジタル・サービス供給契約法制の比較と課題」と題する共同報告を行った。 川和がセンター長、馬場が副センター長を務め、本共同研究グループに参加する全員がメンバーである同志社大学デジタル法制研究センターにおいては5回研究会を開催した。多くの学者、実務家、官庁関係者が参加し、デジタル・コンテンツ及びデジタル・サービス供給契約における期待される目的物の履行の水準、救済等の比較法的研究についての報告、物品売買指令における契約適合性と消費者の救済についての報告などが行われた。 日本でも、デジタル化に伴う新たな消費者問題にどのように対応していくかが近時の大きな政策課題になっている。そこで、本共同研究グループは、消費者庁国際消費者政策研究センターセンターの研究プロジェクトとして「デジタル社会における消費者法制の比較法研究」を立ち上げ、消費者庁スタッフと共同で、EUの消費者政策の流れの中でデジタル・コンテンツ及びデジタル・サービス取引に関して調査・研究を実施した。海外調査の代替として、デジタル・コンテンツ指令及び物品売買指令という2つのEU指令を国内法化すべく2021年に改正されたドイツ民法典について関係者から数回のヒアリングを実施したが、司法省草案作成の担当官であるベンジャミン・ゲールズ博士とゲアハアルト・ションブルク博士に対するインタビューを実施できたことは、消費者庁を通じてドイツ司法省に依頼することによって実現した成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
川和はデジタル・コンテンツ及びデジタル・サービス供給契約(以下デジタル・コンテンツ契約)における期待される目的物の履行の水準についてEU法、英国法を踏まえた比較法的研究行った。この研究をもとに、ドイツ法、日本法、救済についての観点も加え、2021年6月の比較法学会のミニ・シンポジウムで責任者として、「EUと日本におけるデジタル・コンテンツ及びデジタル・サービス供給契約法制の比較と課題」と題する共同報告を松本、芦野、馬場と行った。 松本は、デジタル・コンテンツ契約に関連する債権法改正後の日本の法制度と学説の状況をEUにおけるそれらと比較しながら検討した。また、有償でのコンテンツ取引やサービス供給に伴うキャッシュレス決済、とりわけモバイル決済について、最新の動向を研究した。芦野は、ドイツにおけるデジタル・コンテンツ契約に関する法状況について研究を進めている。本年度は、「EUデジタル・コンテンツおよびデジタル・サービス供給契約の一定の側面に関する欧州議会及び理事会指令」の国内法化について、ドイツの立法担当者およびドイツを中心とした海外の研究者に対するインタビューを行い、その成果の一部を論文として公表した。馬場は、デジタル・コンテンツ契約の効果を中心に研究を進めており、本年度は、特に契約解消後の原状回復の場面における個人データの取扱いについて集中的に研究を行った。海外の研究者や立案担当者に対して行ったインタビューの成果を折り込みつつ、その暫定的な成果を論文として公表することができた。永岩は、デジタル・コンテンツ契約の一定の側面に関するEU指令(EU 2019/770)のドイツにおける国内法化の整理を行った。中でも契約不適合に関する定義規定を中心に、既存のルールと指令国内法化規定との関係についてドイツの議論の検討を進め、研究会報告を通じて示唆と課題を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、デジタル取引を取り巻く立法を含めた世界の法状況を調査し、研究対象となる各国で現在行われている議論にも積極的に関与することにより、望まれるべき法秩序を構築することを目的とする。そのためには、単なるヒアリングだけでなく、日本法の法制度及び研究の現状についても十分に研究した上で、海外の研究者にも発信し、議論することが必要である。とりわけ、本研究にとどまらず、若手研究者が諸外国の研究者とともに比較法研究を行い、その能力を高め、ネットワークを構築し、関係を継続発展していくことが重要である。現在シュミット=ケッセル教授のもとには、ドイツ国内さらにはEU域内だけでなく、その他の国々からも博士号取得を目指す若手研究者やポスドク研究者が在籍している。コロナ感染状況にもよるが、本研究メンバーである永岩が、本務校の授業のない夏期期間などに滞在することによりそれらの研究者と共同で研究を行っていきたい。 研究成果の一部については、現在消費者庁とすすめている研究プロジェクトの成果としても順次公表したい。感染状況によるものの、バイロイト大学、ブリュッセル自由大学、リヨン大学、マンチェスター大学等の研究機関を拠点として、周辺の国々も含めて10日間から1か月程度滞在し、近隣の各国も含めて、海外の研究者と共同で、関係する立法担当諸機関、研究者、実務家、業界及び消費者団体等とのコンタクトを図り、立法の経緯やその課題についての情報を収集し、海外の研究者と共同で収集した資料を分析、検討して研究を遂行していきたい。
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Causes of Carryover |
2021年度についてはコロナ感染状況に鑑み、海外出張を行うことができなかったため、オンラインによるヒアリング主として行うことにより、研究を継続してきた。予算については、次年度に繰り越すことによりコロナ感染状況が落ち着き次第、海外出張旅費として支出していく予定である。
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