2021 Fiscal Year Research-status Report
人民公社期の中国農村における生活秩序の変化とジェンダー
Project/Area Number |
21KK0033
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
堀口 正 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (00438318)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
劉 楠 山梨英和大学, 人間文化学部, 講師 (00713744)
大橋 史恵 お茶の水女子大学, ジェンダー研究所, 准教授 (10570971)
江口 伸吾 南山大学, 外国語学部, 教授 (20326408)
李 亜コウ お茶の水女子大学, 基幹研究院, リサーチフェロー (20870281)
岩島 史 同志社大学, 政策学部, 助教 (30745245)
南 裕子 一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (40377057)
閻 美芳 早稲田大学, 人間科学学術院, その他(招聘研究員) (40754213)
松木 洋人 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 准教授 (70434339)
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Project Period (FY) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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Keywords | 中国農村 / 人民公社時期 / ジェンダー / 生活秩序 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、人民公社期(1950年代から70年代)の中国農村における生活秩序の変化とジェンダーについて、資源配分のあり方に着目し、実証的に検討することを課題としている。この課題に応えるため、2021年11月にzoom方式による会議(研究代表者、研究分担者、海外協力者の参加による第1回目の会議)を開催した。 会議では、研究代表者が本研究の課題や研究計画(2021年度)を紹介した。たとえば、中国農村では、1950年前後の「暫定憲法」「婚姻法」「土地改革法」の公布、またその後の人民公社制度の展開により、封建的な慣習が改められ、男女平等の制度的基盤が構築されたが、実際の生産・再生産労働における変化について、なお不明な点が多いこと。また公共食堂や託児所の現実的な利用状況についても、研究の空白部分になっていることを確認した。その上で、①各地農村の人民公社時期の資源配分のあり方を解明すること、②世帯内外における生産・再生産労働の労働力配置の実態を考察し、「村」や「家」の権力関係や規範にどのような揺らぎがあったのかを解明すること、③さらに①②と関係する問題として、国家レベルの指針や計画生育が基層社会における生活秩序に与えた影響などを解明することを確認した。 2022年3月に、zoom方式を通じて、会議(研究代表者、研究分担者、海外協力者の参加による第2回目の会議)を開催した。会議では、各研究分担者、海外協力者の研究の進捗状況の報告と、2022年度(第2年目)の研究計画などが話し合われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の進捗状況は以下の通りである。 本研究の第1年目の課題は、研究代表者、研究分担者、海外協力者が協力して、研究に必要となる文献を渉猟し、初歩的な文献調査を行うことである。具体的には、アジア経済研究所、国立国会図書館、大学図書館、資料館などで、生産労働・再生産労働などに関する文献や資料を収集するとともに、中国側の研究協力者も所属の研究機関(中国社会科学院や華東師範大学など)で、同様の文献や資料を収集した。 一方、2022年3月に開催した会議(第2回目の会議)では、研究分担者の李氏が「人民公社期の土地制度と女性の土地へのアクセス状況」と題して、研究報告を行った、また中国側研究協力者の張氏が自著(『中国農村部における地域福祉の可能性:未富先老社会と福祉ミックス』ミネルヴァ書房、2020年12月)について、その内容紹介と分析結果および明らかになった点などを報告した。 以上のことから、本研究はおおむね順調に推移していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画(2022年度)について、文献調査を継続して行うとともに、状況をみながら現地調査(中国と日本)を実施し、課題に取り組む。 具体的には、第1に、人民公社期における女性の生産労働への参加やそれを促した要因、また人口生育・生殖、特に子供の数、避妊法、出産の場所などに関する決定権及び決定過程における力関係などを分析・考察する。第2に、同時期における再生産労働、特に育児の社会化の程度やそれによって農村女性がどの程度エンパワーメントの契機を得ていたのかを考察する。 第3に、基層社会における女性の政治参加の状況---政治社会構造における女性の役割やその問題性を検討する。第4に、中国農村女性の「副業」のあり方や「同居共財」へのアクセスについて考察する。第5に、同時期に、婦女隊長、積極分子などとして、人民公社の集団的な生産、政治、社会生活で主導的な役割を果たした女性たちが、どのように養成、抜擢されたのかを考察する。第6に、同時期の土地制度と女性の土地へのアクセス状況を明らかにする。 一方、同時期の特徴との比較を試みるために、高度経済成長期(1950-60年代)の日本社会における育児政策と農業政策の変遷とそれに伴う農村における再生産労働の社会化の位置づけ、高度経済成長と家電製品の導入、家事・育児の共同化・社会化の女性の世帯内・集落内での役割・地位と女性たちの主観性に対する意味を考察する。 なお、上記、文献調査や現地調査を実施(試みる)と同時に、同じ領域、あるいは類似の領域で研究実績がある専門家を招聘して、情報交換会や研究会を実施する。
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Causes of Carryover |
当該プロジェクトの開始が2021年10月からであったことに加え、助成金の研究代表者および各研究分担者らへの配分が11月以降にずれ込んだこと、さらに物品費の多くは外国図書・資料の購入を予定していたが、コロナなどの影響により、たとえ発注を行っても、年度内に手元に届かない恐れがあったため、次年度への使用額が生じた。次年度は、今年度使用できなかった助成金を引き続き、図書や資料の購入などに充てる予定である。
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