2023 Fiscal Year Research-status Report
US-Japan sounding rocket project to establish new strategy for the study of magnetic reconnection and particle acceleration with solar flare observations in X-rays
Project/Area Number |
21KK0052
|
Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
成影 典之 国立天文台, 太陽観測科学プロジェクト, 助教 (50435806)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三石 郁之 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (90725863)
萩野 浩一 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (70762061)
|
Project Period (FY) |
2021-10-07 – 2025-03-31
|
Keywords | 日米共同・太陽X線観測ロケット実験FOXSI-4 / 磁気再結合 / プラズマ加熱 / 粒子加速 / 太陽フレア / X線集光撮像分光観測 / X線用・高速度カメラ / 電気鋳造X線ミラー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、世界初となる「太陽フレアに対するX線集光撮像分光観測」(2024年4月打ち上げ予定の観測ロケット実験 FOXSI-4)を日米共同で実施することで、磁気再結合が引き起こす磁気エネルギーの解放とそれによって生じるエネルギー変換機構(特に、粒子加速)を追究するための新しい基盤を構築することである。 2023年度は、観測ロケット実験 FOXSI-4 の打ち上げ準備を全て完了させた。具体的には、日本が担当するフライト品(軟X線用・高速度CMOSカメラ、硬X線用・高速度CdTeカメラ、電気鋳造X線ミラー)を米国に輸送、コンポーネントごとの各種試験(電気的噛み合わせ試験、熱真空試験、振動試験)を行ったのちに、米国が製作した観測装置主構造に組み込んだ。その後、観測装置全系での各種試験(望遠鏡のアライメント、カメラシステムの動作試験)を実施した。次に、完成した観測装置を観測ロケットに組み込み、ロケット全体での最終試験を行った。最後に、こうして完成したロケットを、打ち上げを行うアラスカ州・ポーカーフラット実験場に輸送し、打ち上げに向けた最終整備を行った。 また、打ち上げに向けて、日本が得意とする太陽フレアの規模予測を打ち上げ手順に組み込む手筈も整えた。 サイエンスの推進については、「日米メンバーが参加する定例会合」の場を用いて、観測ロケット実験 FOXSI-3(2018年打ち上げ)のデータ解析や、FOXSI-4 で目指すサイエンスについて、お互いに進捗状況を確認するとともに議論を行った。2024年2月には、国内で FOXSI-4 の打ち上げとその後のデータ解析について議論する研究会を開催した。 FOXSI-4 の計画推進、装置開発および科学成果については、学会にて発表を行うとともに、修士論文4篇、博士論文1篇としてもまとまった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、2024年4月に予定されている日米共同・観測ロケット実験 FOXSI-4 の打ち上げに向け、観測装置の組み立てと試験を計画通りに実施し、打ち上げ準備を全て完了させた。これらの活動においては、米国チームとの綿密な連携と調整が必要であり、日本のメンバーが要所ごとに渡米して共同で作業を行った。渡米していない時期は、毎週リモートで定例会合を開催し、円滑なコミュニケーションを確保した。これらを経て、FOXSI-4 の打ち上げ準備は予定通り進めることが出来た。 また、FOXSI が目的とするサイエンスについても、定例会合や研究会の場を用いて、お互いに研究進捗状況を確認するとともに、活発な議論を行った。 なお、FOXSI計画に携わる大学院生は8名おり、本研究は大学院生の教育・育成にも役立っている。2023年度は、本研究に関わる修士論文が4篇、博士論文が1篇、執筆された。 FOXSI-4 は観測時間が5分間に限られる観測ロケットを用いて、発生予測が困難な太陽フレアを観測するという世界初の試みを行う。そのため、ロケットを打ち上げ可能状態でスタンバイさせ、リアルタイムで太陽の活動をモニターし、フレアの発生直後にロケットを打ち上げるという手順をとる。さらに、大規模なフレアを観測したいというサイエンスからの要請もあり、打ち上げオペレーションの難易度はこれまでのロケット実験の比ではない。そこで我々は、日本が得意とする太陽フレアの規模予測を打ち上げ手順に組み込む手筈も整えた。これは日本からの貢献として当初は予定されていなかったものであったが、日本の共同研究者の協力と、これを担当した大学院生の活躍により実現した。これにより、観測装置の提供だけでなく、打ち上げオペレーションにおいても日本のプレゼンスを示すことに成功した。 以上を踏まえ、計画は、当初の計画以上に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
観測ロケット実験 FOXSI-4 の打ち上げは、2024年4月の予定である。これに向け下記の推進方策をとる。 2024年度初め(4月)に予定されている FOXSI-4 の打ち上げキャンペーンは射場(米国・アラスカ州)で参加し、打ち上げ準備→打ち上げ→太陽フレア観測→装置回収→データ確認までを行う。 打ち上げ後は、取得した観測データを中心に、数値計算も交えて、科学成果の創出にあたる。また、取得したデータの公開の準備も行い、X線集光撮像分光観測という新しい種類の太陽フレア観測データを研究者コミュニティーに普及させ、衛星計画といった、より大きな計画推進のための基盤を構築する。 観測ロケット実験は、若手研究者や大学院生が直接宇宙ミッションに携わることができる大変貴重な機会であり、この点を活かし人材育成にも努める。
|
Causes of Carryover |
観測ロケット実験FOXSI-4の打ち上げに要する期間は、「打ち上げ準備」→「打ち上げ」→「打ち上げ後の観測装置とデータの回収」までの約1ヶ月である。2023年度予算を計画した段階では、2023年度内に滞在期間が終了する可能性があったため、この1ヶ月間の滞在費をすべて2023年度に計上していた。しかし、実際の打ち上げは2024年4月上旬となったため、米国での滞在期間が年度をまたぐこととなり、その結果、次年度使用額が生じた。この次年度使用額は、当初の目的通り、2024年度に打ち上げに係る滞在費として使用する。
|
Remarks |
研究代表者の成影 典之(国立天文台)が、研究協力者の渡辺 伸(JAXA 宇宙科学研究所)とともに、公益財団法人 天文学振興財団 令和5年度 吉田庄一郎記念・ニコン天文学業績賞を受賞。
|
Research Products
(29 results)