2022 Fiscal Year Research-status Report
スリランカにおける下水水質情報に基づいた下水管路劣化予測システムの開発
Project/Area Number |
21KK0069
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐野 大輔 東北大学, 工学研究科, 教授 (80550368)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水谷 大二郎 東北大学, 工学研究科, 助教 (30813414)
Amarasiri Mohan 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (50815537)
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Project Period (FY) |
2021-10-07 – 2024-03-31
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Keywords | スリランカ / 下水管路劣化予測 / 下水水質情報 / 微生物起源解析 / 土壌微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、スリランカにおいて、微生物の起源を同定する手法であるMicrobial Source Tracking(MST)の手法を応用し、下水管の破損部分から混入する土壌由来の微生物の下水中に占める割合を空間的・時間的に把握することで、下水管破損箇所を推定し、かつ下水管劣化速度の予測に適用するための新規手法を開発することを目指すものである。研究2年度である令和4年度においては、まずスリランカ側カウンターパート(チャンディカ・ガマゲ(ペラデニヤ大学医学部・講師)、及びチャミンダ・サマラスーリヤ(モラトゥワ大学地球資源工学部・講師))との現地打ち合わせを通じ、スリランカ国内における調査地点の確定を行った。希望する調査地点で下水採取を行うために、サンプリング担当者を決め、詳細な計画を共有した。さらに、本研究で想定している手法が適用可能であることを確認するために、日本国内で未処理下水を採取し、総DNAを抽出して、細菌の分類に用いられる16s rRNA遺伝子配列に関する次世代シーケンス解析を行った。その結果、腐食が進んだ下水管路を通った下水中からは、硫黄酸化細菌及び硫酸塩還元細菌が比較的高頻度で検出されることが見出された。この結果は、硫黄の代謝に関わる細菌群が下水管の腐食劣化を検出するための指標として利用可能であることを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年明けから続いたスリランカの首都コロンボを中心とした政治的な混乱はかなり収束しており、2023年1月には現地を訪問することが可能であった。その結果、調査対象地域における下水採取地点と下水採取協力者を決めることができた。令和5年度にはスリランカで採取したサンプルの解析が可能となるが、日本での準備によりサンプル処理及びデータ解析方法は確立されており、スムーズに研究を進めることが可能な状況にあることから、(2)おおむね順調に進展している、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、スリランカにおける複数箇所から得られたサンプル中から総DNAを抽出し、細菌の分類に用いられる16s rRNA遺伝子配列に関する次世代シーケンス解析を行う。調査対象地域には劣化の進んだ下水管路も含まれており、日本で得られた結果のように、硫黄の代謝に関わる細菌群が比較的高頻度に検出されるかどうかについて検討する。さらに、下水管劣化の指標となりうる細菌群の絞り込みを行った上で、その細菌群に由来する遺伝子を対象とした定量PCR系の構築に取り組む。定量PCRに用いるプライマー・プローブセットは複数設計し、日本とスリランカで取得した下水サンプルに適用して、使用可能であるか否かを検証する。定量PCR系の構築では、試行錯誤を計画的に進める。
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Causes of Carryover |
令和4年度前半に予定していたスリランカ渡航を取りやめた分と、スリランカからのサンプル数が予定より少なかったことに起因する消耗品の消費量減少により、次年度使用額が生じた。令和5年度は、現地在中の協力者にサンプル採取を依頼しており、サンプル数増加に対応するための消耗品代として使用する。
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