Development of dual-purpose ships for Arctic sea and normal sea

2021 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 21KK0079
• Research Institution: Osaka University
• Principal Investigator: 澤村 淳司 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (90359670)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 飯田 隆人 大阪大学, 工学研究科, 助教 (50837573) ; 千賀 英敬 大阪大学, 工学研究科, 助教 (60432522)
• Project Period (FY): 2021-10-07 – 2026-03-31
• Keywords: 氷海船舶 / 氷抵抗 / 氷海船型 / 最適化

Outline of Annual Research Achievements

本研究は氷海船舶の氷海域性能と通常海域性能の両立化を考えた船型と船体構造を提案することが目的である．研究計画では，本研究の1年目となるR3年度（R3年11月から開始）から3年目のR5年度までに，数値計算による高精度な氷海船舶の性能評価法の構築を行うことであった．そして，本年度の研究実績は，まず，砕氷板の船体喫水面以下の沈み込みによる航行性能低下（船底に沈み込んだ氷片板と船体との接触による抵抗増加の計算）を考慮した氷海域性能数値計算モデルの改良を行った．改良した数値計算モデルは，過去に行われた氷海船舶の小氷片板群直進航行時の氷抵抗計測試験（模型船実験）の結果，および，既存の流氷域中の船体抵抗推定式と比較され良好な一致を得る事はできた．そして，R3年度の研究で改良されたプログラムは，R4年度において，斜向試験の結果と比較され，平坦氷中の船体抵抗（平坦氷の割れと砕氷板の船底沈み込みによる抵抗）が推定できる計算モデルへと改良される予定である． また，本研究の2年目となるR4年度から実施予定の，実氷海での船体データの取得と数値計算の検証（大阪大学，ノルウェー北極大学）（R4-R7年目）の準備として，過去に取得した，南極観測船「しらせ」が南極海の氷海域を航行したときの船体運動および構造応答データの再解析を行い，実船データ取得方法の検討を行った．数値計算モデルの検証データとして有用な実船データは，砕氷プロセスにおける，氷況データ（氷厚みと大きさ），船体と氷板の接触，氷板の割れのデータと，それに対応した船体運動（応答）データを同時に取得することが重要である．南極観測船「しらせ」搭載の計測システムをそのまま他船に導入することは難しく，新たな計測システムの構築が必要であることが分かった．

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

本研究の1年目となるR3年度の研究計画は，数値計算による高精度な氷海船舶の性能評価法の構築を行うことであった（R3年からR5年で実施）．R3年度は，砕氷板の船体喫水面以下の沈み込みによる航行性能低下を考慮した数値計算モデルの改良を実施することができ，数値計算の高精度化については，おおむね順調に進捗しているといえる．しかしながら，R4年度から実施予定の，実氷海での船体データの取得と数値計算の検証（大阪大学，ノルウェー北極大学）（R4-R7年目）の準備のため，R3年度中にノルウェー北極大学への訪問を考えていたが，新型コロナの影響により実施が叶わなかった．氷海船舶の実船データの取得は，海氷観測が可能な3月から5月の間に限定されるため，よく多くの実施回数を確保するためには早い段階での事前の準備が必要になる．事前準備のない状態でのR4年度の実船計測は難しい．以上のことから，現在までの進捗状況は，「やや遅れている」とした．

Strategy for Future Research Activity

氷海域と通常海域での航行性能を両立する船型と，氷海航行のための安全性と経済性を両立した船体構造をもつ新型氷海船舶の提案のため，本研究課題は，3つの研究課題に細分し実施する．R4年度以降は各研究項目に対して次のように進める．
１）数値計算による高精度な氷海船舶の性能評価法の構築．（大阪大学）（1-3年目）：R3年度において改良した数値計算モデルを発展させ，氷海船舶が平坦氷中を航行するさいの，氷板の割れと砕氷板の船体喫水面以下の沈み込みを同時に計算可能な計算モデルへの改良を試みる．そして，この数値計算モデルをもとに氷海域と通常海域での航行性能を両立する船型を提案し，模型船実験より実証する．
２）実氷海での船体データの取得と数値計算の検証（大阪大学，UiT）（2-5年目）：R4年度は，ノルウェー北極大学との共同で，実氷海の船体応答データの取得のための準備として，ノルウェー北極大学にて研究打合せを行う．ノルウェー北極大学との研究打合せはR3年度中に行うことを考えていたが，新型コロナの影響により断念した．R4年度も新型コロナの影響によりノルウェー北極大学への訪問の中止が考えられ，これに替わる日本国内での実氷海（北海道，オホーツク沿岸の流氷域など）データの取得も考慮に入れる．
３）氷海域性能と通常海域性能を両立した船首船型の決定（大阪大学）（4-5年目）：数値計算モデルの改良が終わり次第，新型船型を提案し，模型船実験を実施する．

Causes of Carryover

実氷海での船体応答データの取得（大阪大学，ノルウェー北極大学）（R4-R7年目）の準備のため，R3年度中にノルウェー北極大学への訪問を考えていたが，新型コロナの影響により中止になったことで，ノルウェー北極大学訪問に対する予算の使用がなくなり，次年度使用額が生じた．R4年は，ノルウェー北極大学への滞在（実データ取得のための研究打ち合わせ）を優先させた（当初の予定より滞在期間を長くするなど）予算の使用を考える．また，新型コロナの影響によるノルウェー北極大学への訪問が中止になる場合を考え，代替案として，北海道オホーツク沿岸での計測データの取得や，数値計算モデルの開発を早め模型船実験の着手を前倒しする等の予算使用も考慮に入れる．