2021 Fiscal Year Research-status Report
Advanced joint research for detection of critical spot in reservoir enabling great promotion of geothermal power generation
Project/Area Number |
21KK0090
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小池 克明 京都大学, 工学研究科, 教授 (80205294)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柏谷 公希 京都大学, 工学研究科, 准教授 (40447074)
後藤 忠徳 兵庫県立大学, 理学研究科, 教授 (90303685)
多田 洋平 京都大学, 工学研究科, 特定研究員 (50648582)
久保 大樹 京都大学, 工学研究科, 助教 (90758393)
石塚 師也 京都大学, 工学研究科, 助教 (90756470)
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Project Period (FY) |
2021-10-07 – 2026-03-31
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Keywords | 地下深部温度 / 数理・情報地質学 / 比抵抗分布 / 地化学分析 / リモートセンシング / 熱水流動シミュレーション / インドネシア / バンドン盆地 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウィルス禍のため,共同研究機関であるバンドン工科大学および研究対象の地熱フィールドには行けなかったものの,インドネシアへの応用の前段階として,地下深部の温度分布推定法の開発に取り組んだ。ボーリングによる温度検層データはこの推定に最も適しているが,通常,対象領域の大きさに比べてデータ密度が格段に小さく,深度範囲も短い。深層学習型ニューラルネットワーク(DNN)に空間的相関構造の学習規準を組み込んだ,研究代表者らによるニューラルクリギング(NK)を改良し,温度データの位置情報に加えて,地温勾配,キュリー点深度,温泉水の化学成分,表層地質などを学習に用いた。その結果,スパースなデータ分布状態であっても温度検層データの外挿と内挿の精度が通常のDNNやクリギング法よりも高いことを確かめられた。日本全域での坑井地点数1,404の温度検層データにNKを適用した結果,地表から数kmの深度範囲までの地温分布を日本全域にわたり,適切に推定できた。3次元地温分布から水の臨界点に到達する位置を求めたところ,活火山付近では浅い深度で臨界点に到達することが明らかになり,本手法は臨界点の特定に有効に適用できることを実証できた。 また,LiDARによる高空間分解能の地形モデル(DEM)を用いて亀裂の3次元分布形態を推定する手法についても検討した。DEMの多方位陰影画像からリニアメントを抽出し,これとハイパースペクトル衛星画像から熱水変質帯と高植生ストレス域を重ね合わせた結果,深部まで繋がり,透水性が高く,深部からの酸性熱水やガスの通路となり得る亀裂を概ね特定できるようになった。さらに,差分干渉SAR処理による地形変化と地球統計学との組合せから熱源の位置と大きさを推定できるようになり,NKによる地温分布,および高連続性・透水性亀裂の分布と重ね合わせることで,臨界スポットが抽出できる可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のようにインドネシアへの渡航,現地フィールドでの調査・計測はできなかったが,オンライン会議を駆使したインドネシア側との密接な連携と打ち合わせにより,研究は進展・発展できている。バンドン工科大学の共同研究者は研究対象の地熱フィールドでガスと熱水試料のサンプリングと成分分析を進め,複数の地質温度計を適用することで地下温度分布に関する予察的な結果が得られている。また,京大側はスパースな分布状態の温度検層データから地下深部までの地温分布,高空間分解能DEMとハイパースペクトル衛星画像から高連続性・透水性亀裂の分布,および差分干渉SAR処理による地形変化から熱源の位置と大きさを高精度で推定できる手法を開発し,インドネシアの現地フィールドに適用できる手法と体制が整った。超高温・高圧域を対象とした流体の流動シミュレーション法の開発のため,流体の熱力学的検討も進めており,その成果の一部を学会で発表した。これらから研究は順調に進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きインドネシアの地熱フィールドを対象として,下記の5項目の研究を実施する。 1. 複数地点での温度検層データと広域物理探査データを収集し,開発したNKを応用して,地下5 kmまでの温度分布を対象フィールド全体にわたり明らかにする。この温度分布を以下の研究項目では教師像として利用する。 2. 地磁気-地電流探査の実施データから地下5 kmまでの比抵抗分布を明らかにする。また,1の温度分布と比抵抗モデルを統合し,岩石温度と比抵抗の実験関係式に基づいて臨界スポットの要件を満たす高温-高透水性の箇所を特定する。 3. 噴気帯,温泉などからガスを採取し,構成成分の濃度と同位体組成の分析,およびガス地質温度計の適用による地下温度分布からガス起源深度を推定する。この起源深度と比抵抗分布モデルに基づく臨界スポット候補箇所を統合する。また,熱水を採取・分析し,各元素濃度や同位体比と複数の地質温度計を用いることで熱水起源の推定温度を求め,これと臨界スポット付近の温度との整合性に基づいて,臨界スポット候補を絞り込む。 4. 高空間分解能DEMを用いた亀裂の3次元分布形態推定,ハイパースペクトル衛星画像からの地熱兆候地の抽出,および差分干渉SAR処理による地形変化からの熱源の位置と大きさの特定を発展させ,臨界スポットまで繋がる長くて透水性の高い亀裂を特定する。また,その亀裂の地表位置で表層ボーリングを多く掘削し,ガス中のラドン濃度の測定とガス組成分析を行い ,流体の上昇通路になっていることを検証する。掘削による試料の鉱物組成・化学組成も分析し,熱水変質の進行を確認する。 5. 臨界スポットを含む地下5 kmまでの超高温・高圧域での流体の流動形態,気相と液相の混合率,貯留層の温度・圧力を高精度で明らかにするための計算法開発に取り組む。これを,臨界スポットから得られる発電量とその時間変化の予測に応用する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,新型コロナウィルス禍により海外渡航に強い制限が掛かったためであり,共同研究機関であるバンドン工科大学に訪問できず,研究対象の地熱フィールドでの現地調査・計測を実施できなかった。これにより予定していた外国渡航旅費の支出がなく,旅費に大幅な残額が生じた。この残額分は,海外渡航の制限が緩和されれば次年度の旅費として有効に使用し,バンドン工科大学での共同研究と現地調査・計測を十分時間を掛けて実施する。
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