2022 Fiscal Year Research-status Report
Model & scenario analyses of the response of coastal ecosystems to industrial structural changes in the Republic of Palau
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21KK0112
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
梅澤 有 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50442538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 允昭 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(神栖), 主任研究員 (10805865)
中村 隆志 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (20513641)
宮島 利宏 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (20311631)
渡邉 敦 公益財団法人笹川平和財団, 海洋政策研究所 海洋政策研究部, 主任研究員 (00378001)
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Project Period (FY) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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Keywords | パラオ / 海草藻場 / サンゴ礁 / 陸起源物質 / 魚類生態系 / 流出負荷モデル / 流動・物質循環モデル / 社会実装 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナによる渡航・現地活動制限がほぼ解除されたことから、2022年7月に現地カウンターパートを含めたオンライン会議を行い、沖縄県備瀬サンゴ礁においてパラオでの調査を見据えた模擬的な共同観測を行った。パラオ共和国では、2022年9月と2023年1月に小規模の調査を、2023年3月に環境調査も含めた大規模な現地調査を実施した。現地調査時には、現地カウンターパートのほか、JICA専門家との研究相談も行った。 乾季(3月)の調査では、バベルダオブ島において近い将来に想定されている農地開発等による栄養塩や土砂流出の影響を予測するための現状評価を目的とし、同島周辺の主要な河川影響域にあたるサンゴ礁、海草藻場、マングローブ林海域において水質(塩分、栄養塩、ラドン、クロロフィル蛍光等)調査や、懸濁物・堆積物の化学組成の解明を目的とした試料採取を実施した。また、陸起源物質の流入や、海洋保護区の設置が、高次栄養段階の生物に与える影響を調べるために、同位体分析用の植食魚及びその餌となる藻類、環境DNA用の海水試料の採取も行った。 現地調査に加えて、これらの化学成分分析結果(空間的な差異や拡がり)を裏付けていく流動・物質循環モデル開発を進めた。主に、海底地形データの収集ならびに衛星画像を用いた海底地形図の推定を行い、高解像度の海底地形図の作成を進めた。また、陸域からの環境負荷を評価・予測するために流域モデルSWAT+を用いた流出負荷モデルの開発に着手し、そのインプットデータの整備や、それらを作成するためのツール群の開発を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国外調査では、現地への調査機材・道具の搬送、現地での傭船・試料処理施設の確保と実施、レンタカーの確保、目的とする海域での調査許可の取得、化学分析や遺伝子分析のための水・堆積物・生物試料の採集と国外持ち出し許可など、様々な障壁がある。2022年度は、現地カウンターパートの協力もあり、これらの作業過程を把握・実施し、2023年12月までの試料採取許可も得ることが出来たため、2023年の調査を引き続き順調に行うことができる見通しを持った。3月に調査を行ったため、多くの試料は分析処理中の段階にあり、データの検討と解釈は2023年度に持ち越しているが、これも予定通りである。円安や燃油料の高騰などによって、研究申請時の計画からは調査期間や規模を縮小して研究を行っていく必要性が出てきている。 最終的に、陸起源物質の沿岸生態系への拡がりの現状把握と予測を行うことが出来た段階で、現地関係機関や住民へ向けて、水産資源保全に向けた提言を行っていく必要がある。2022年度の調査では、パラオのマングローブや海草藻場生態系内に賦存する有用水産ベントス種に関し、生態系内での資源量の把握と資源の国内での流通量や価格に関する情報の調査や、国の食料安全保障政策上、優先度が高い対象についても情報を得ることが出来た点は、プロジェクト成果のアウトリーチ活動にもつながる。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は2022年度に得られている水試料の栄養塩分析、堆積物・生物試料の安定同位体比分析や遺伝子解析を進め、今後の調査海域の選定と調査対象の絞り込みを行っていく。 雨季(9月頃)に3月と同様の現地調査を予定しており、特に海草藻場による栄養塩保持と河川由来懸濁物の捕集の機能を直接的に評価する調査を行う。そこで、現地において確実な調査を実施できるよう、7月に国内の藻場において、N含量・窒素安定同位体比測定用の海草藻類の採集、およびセジメントトラップによる懸濁物捕集の予備実験・共同調査を行う。また、対象海域の流動・物質循環モデルの開発および、流域モデルの開発を進め、基本的なモデルフレームワークを完了させる。さらに、9月の調査時には、各種物理・化学・生物パラメータを集めて、モデルの精度検証・向上を行い、将来予測を行うためのシナリオを検討・具体化する。また、昨年に引き続いて、マングローブや海草藻場生態系内における有用水産ベントス種の資源量及びパラオ国内での調査手法を改善するとともに、環境負荷や利用状態の異なる生態系を対象に関連情報を取得する。これらの資源を持続可能に利用しつつ、付加価値を最大化するブルーエコノミー施策をパラオの関係者と議論していく。
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Causes of Carryover |
若手人材育成のために複数名の大学院生を海外調査に同行してもらい、海外調査における調査機材の輸送、現地カウンターパートとの交渉、水・生物試料の採取・持ち出し許可などのノウハウを学んでもらうことを考えていたが、共同調査時期が就職活動時期と重なって学生を同行させることが出来なかった。また、現地調査において、2隻のボートをチャーターして調査を行う予定だったものを、1隻で同乗する形で調査を実行できたことにより、予算の節約ができた。 2023年度の調査では、複数名の大学院生を調査に同行させて、将来的に、国外共同研究を実施することが出来る人材育成を目指す。
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Research Products
(1 results)