2023 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the pathogenesis of aortic dissection caused by the alteration in microfibrils
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21KK0151
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
柳沢 裕美 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 教授 (40746301)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉山 夏緒里 早稲田大学, 理工学術院, 次席研究員(研究院講師) (20889662)
神吉 佐智子 大阪医科薬科大学, 医学部, 講師 (40411350)
木村 健一 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 助教 (50633153)
石井 柳太郎 筑波大学, 医学医療系, 特任助教 (90907669)
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Project Period (FY) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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Keywords | ミクロフィブリル / 大動脈解離 / マウスモデル / 弾性線維 / ハイブリッドドメイン / シンクロトロンイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
大動脈の弾性線維形成に必須であるミクロフィブリル異常による大動脈壁の脆弱性が、大動脈解離の根底をなすことが近年示唆されている。大動脈解離は大動脈中膜で解離を生じ、病変が広範囲に広がることにより循環不全に陥ったり、大動脈瘤ー大動脈瘤破裂に進行するため、極めて死亡率の高い疾患である。これまで解離と大動脈瘤の発症メカニズムは同じものだとされてきたが、現在では両者は病因的に異なると考えられている。しかし、大動脈解離の発症と進行の分子機序は未だ解明されていない。ミクロフィブリルは「組織の構築と保持」に加え、大動脈壁でのTGFbシグナル制御のハブ的役割を担っている。また、弾性線維―接着斑―細胞内骨格を介した大動脈疾患発症への関与が報告されるなど、ミクロフィブリルの新たな生物学的役割が注目されている。本研究の目的は、ミクロフィブリルの主要構成成分であるFibrillin-1の異常を有する、大動脈解離患者由来の遺伝子変異を導入して作製した新規大動脈解離マウス(ADマウス)を用いて、変異ミクロフィブリルと大動脈解離の分子病理学的解析を統合的に進め、大動脈解離発症予防と治療法を確立するための基盤を築くことである。そのために、ミクロフィブリルの生化学、大動脈疾患の循環遺伝学、トランスクリプトーム解析の専門家を招集し国際共同研究チームを組織し研究を遂行している。興味深いことに、我々はFIbrillin-1 の点変異により、細胞特異的にミクロフィブリルの形成が障害されるという事象を見出した。ミクロフィブリルの組織特異性とシグナル伝達の関係性を探るモデルとして、最終年度はさらにADマウス由来の線維芽細胞や平滑筋細胞が産生するミクロフィブリルの違いを検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度はシンクロトロンによるADマウスの断裂部位を定量的に評価するために、5週齢に続けて3週齢の野生型とADマウスの上行大動脈をシンクロトロンによりイメージングした。データ解析では、ベルギーのシンクロトロンイメージングデータに遠隔でアクセスし解析を行った。10月には米国ソルトレークシティーで行われた米国マトリックス生物学会において、ベルギーと米国チームとデータデスカッションと論文の打ち合わせを行うことができた。さらに、Fibrillin-1のハイブリッドドメインが欠損したマウスとC末端側をGFPで置換したGT-8マウスの解析に参加し、弾性線維の断裂を生じたマウスではマストセルが外膜側に見られることを報告した(Matrix Biology, 2023).国際共同研究をベースに、マルファン協会がサポートする国際グラントに応募し採択された。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)変異FIbrillin-1(FBN1)の生化学的特性の解析:変異FBN1線維芽細胞を使ったセクレトーム解析とRNA-シークエンスを組み合わせ統合的に解析する。ミクロフィブリルの生成を制御する因子の同定を試みる。 (2)大動脈解離の経時的病理変化の多角的解析: 2年齢のADヘテロマウスから採取した大動脈のシンクロトロンイメージングを行う。シンクロトロンに使った大動脈サンプルを用いて、炎症細胞や平滑筋細胞の解析を行う。 (3)解離発症前後の21日と35日でのsingle cell RNAシークエンス と微小領域RNAシークエンス の解析と検証実験を継続して行う。
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Causes of Carryover |
コロナの影響で2022年から2023年にかけて繰越金があったため、2023年度もその影響で次年度使用額が生じた。本年は円安が加速しているために、海外研究者との打ち合わせに生じる航空運賃が上がる可能性があり、繰越金はその差額に充てる見込みてある。
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