2021 Fiscal Year Research-status Report
腹水中ペプチド・デグラドミクスに注目した進行卵巣癌に対する腹腔内環境戦略の創生
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21KK0157
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
梶山 広明 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (00345886)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉原 雅人 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (00878374)
佐藤 綾人 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特任准教授 (10512428)
横井 暁 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (30737135)
小屋 美博 名古屋大学, 医学系研究科, 特任講師 (80396960)
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Project Period (FY) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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Keywords | 卵巣癌 / 腹水 / ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
卵巣癌は診断時に極めて多くの症例で腹膜播種を伴っており、予後不良の主要な因子となっている。よい植物が育つにはよい“種”とよい“土壌”が必要である様に、卵巣癌の癌性腹膜炎の克服には、卵巣癌(種)だけではなく腹膜環境(土壌)を一体として捉える必要がある。腹膜腔という閉鎖的空間において、腹水は癌細胞と宿主細胞との間の相互作用が生じる媒体であり、反応の場でもある。本課題では、腹腔内全体を一つの生態的環境(エコシステム)と見なし、「卵巣癌-腹膜間の細胞コミュニケーション」をつなぐ主要な媒体である悪性腹水中のペプチドバランスに着目した新規卵巣癌腹膜進展の機序解明を目的とする。そして、フライブルグ大学分子医学研究所及び病理部に所属するOliver Schilling博士との国際共同研究の上、悪性腹水中のジペプチジルペプチダーゼ酵素群を主としたペプチドバランスを明らかとするために、TMT-TAILS法を用いて、N-ターミノームを網羅的探索することで、癌性腹膜炎化に対する寄与の大きい基質を見出すデグラドミクス解析を行う。さらに、腹腔内エコシステムにおける卵巣癌細胞と宿主細胞としての腹膜中皮細胞や脂肪細胞とが織りなす相互作用を標的として、進行卵巣癌の癌性腹膜炎化に至る新規メカニズムを解明する。最終的に、卵巣癌における腹膜環境の正常化に焦点にあてたジペプチジルペプチダーゼ阻害剤を治療応用につなげるべく、臨床上の活用を目指す。
本年度は、ジョイントディグリープログラムの一環として独・フライブルク大学附属病院外科系病理部に大学院生1名が留学中であり、卵巣癌悪性腹水の大規模プロテオミクス解析を行った。その結果、新たに3つの腹水分子型サブタイプを同定するとともに、数種の新規予後マーカーを同定した。これらの成果は今後の卵巣癌個別化医療の発展に寄与するものと考えられ、現在論文として報告準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、以下の内容に関する成果を挙げることができたと考える。卵巣癌は腹水を介して腹腔内に直接播種することが知られ、腹水中には癌細胞だけでなく、免疫細胞をはじめとする非腫瘍細胞も多数存在し、これらの細胞からプロテアーゼやその基質となるサイトカインが放出されることが知られているが、腹水中におけるタンパク分解シグナルの詳細について検討した報告はない。本研究ではこれまでに、高悪性度漿液性卵巣癌(HGSOC)91例から採取した悪性腹水を用いて、データ非依存解析(DIA)法による大規模プロテオミクス解析を行い、悪性腹水のプロテオームシグネチャーを評価するとともに、バイオマーカー候補の探索を行った。その結果、ECM、ECM, tissue-leakage, coagulationをそれぞれキータームとする3つの異なるサブグループを同定し、各サブグループ間で蛋白分解活性が有意に異なることを確認した。また、Cox proportional hazards model by componentwise likelihood based boosting (CoxBoost法)を用いて、予後に関連するバイオマーカー候補を抽出し、得られた分子群のエンリッチメント解析から、凝固・補体活性化が予後と相関することを確認した。これらの結果からプロテオームリソースとしての腹水の有用性が示唆された。本研究内容から得られた複数の候補遺伝子を用いて、卵巣癌実験モデル動物を使用した検証実験を行い、これらを統合した内容の論文の作成準備をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
社会状況により渡欧時期を調整し、研究代表者が現地における悪性腹水の品質チェックとアミノペプチダーゼを用いた酵素反応実験を含むデータ分析やデグラドミクス解析を、Oliver Schilling博士とともに行う予定を計画する。現地にて実施できない内容に関しては、webミーティングを介して指導を行う。また当初からの標的である腹水中に存在する免疫細胞に対して、腹水が抑制的あるいは促進的に作用するかを、原因となる特異的物質とともに同定することで、腹腔内エコシステムにおける卵巣癌細胞の悪性化プロセスの解明と腹膜環境の正常化を目指した研究基盤の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
物品の欠品等にて発注の時期に遅れが生じたため、次年度早期に使用予定である。
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Research Products
(20 results)
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[Presentation] Peritoneum-inducible Notch-dependent intra-tumoral heterogeneity mediates cell-fate dynamics and development of metastatic ovarian cancer2021
Author(s)
吉原 雅人, 杉山 麻衣, 小屋 美博, 伊吉 祥平, 北見 和久, 宇野 枢, 茂木 一将, 田野 翔, 玉内学志, 横井 暁, 池田芳紀, 芳川修久, 那波 明宏, 吉川文隆, 梶山 広明
Organizer
第73回日本産科婦人科学会学術講演会
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