2022 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the mechanisms of arsenic-induced cardiometabolic diseases
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21KK0170
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
姫野 誠一郎 昭和大学, 薬学部, 客員教授 (20181117)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
角 大悟 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (30400683)
原 俊太郎 昭和大学, 薬学部, 教授 (50222229)
岡村 和幸 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康領域, 主任研究員 (50736064)
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Project Period (FY) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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Keywords | ヒ素 / バングラデシュ / 血管障害 / 糖尿病 / 筋肉 / 脂肪代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
バングラデシュのヒ素汚染地域の住民を対象とした体組成、筋力の測定のための準備を行った。姫野は2022年11月、2023年1月の2回バングラデシュのラジシャヒ大学を訪問し、体組成計、握力計、脚力計を使った計測のセットアップを行った。ラジシャヒ大学のスタッフ、学生に測定機器の使用方法に習熟してもらい、大学から近い距離にあるヒ素汚染地域において、パイロットスタディを行い、調査手法、記録システムなどの検証を行った。姫野の帰国後にラジシャヒ大学のスタッフ・学生が本格的に遠隔地にあるヒ素汚染地域、および、非汚染地域を訪問し、体組成、筋力の測定を実施した。現在、400名以上から収集したデータの解析を進めている。 2023年3月に姫野、岡村が米国ナッシュビルでの米国毒性学会、および、共同研究者のBarchowsky教授が所属するピッツバーグ大学を訪問し、筋肉を標的としたヒ素研究を実験動物、培養細胞を用いてどのように進めるか議論した。岡村はヒト胎児筋組織由来の線維芽細胞を亜ヒ酸に曝露すると、細胞老化の指標が変化し、SASP因子であるMMP1, IL-1β, IL-8, PAI-1, GDF15の発現量が増加することを観察した。ピッツバーグ大学との共同研究では、さらに低濃度の亜ヒ酸の影響、および筋肉細胞、組織を用いた研究を実施する予定である。 角は、亜ヒ酸曝露による筋肉由来細胞への影響を検討するため、マウス筋芽細胞C2C12細胞の分化・融合に対する亜ヒ酸曝露の影響について検討し、亜ヒ酸を添加する時期によって、C2C12細胞への影響が異なることを見出した。原は、過酸化脂質を除去するiPLA2gammaのノックダウンによりヒ素等感受性が増すことを見出した。ヒ素によるリン脂質ヒドロペルオキシド等の脂質過酸化物の増加をLC-MS/MSを用い測定する系を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バングラデシュでの野外調査については、姫野が今年度に2回バングラデシュを訪問して体組成計、握力計、および脚力計を用いた測定の準備、パイロットスタディを行った。その後、ラジシャヒ大学の共同研究者により400名以上の対象者についての測定を実施することができた。元々、本格的な調査は2023年度の実施を予定していたが、2023年度はバングラデシュで大きな選挙があって国内の状況が不安定となるため、調査を前倒しした。そのため、予定より約半年早く研究を進めることができた。 本研究は、日本・バングラデシュ・米国の共同研究として実施しているが、2023年3月の米国毒性学会において、バングラデシュのHossain教授、米国のBarchowsky教授、及び、姫野の3者が共著となってのヒ素と血圧との関係に関する発表を行うことができた。また、この米国毒性学会に研究分担者の岡村も参加・発表し、その後、姫野、岡村がピッツバーグ大学を訪問し、Barchowsky教授と今後の共同研究について詳細な研究打合せを行うことができた。岡村は2023年7月からピッツバーグ大学において共同研究を実施することになった。また、この国際共同研究に参画していることが所属の国立環境研究所で評価され、2023年9月から国立環境研究所の資金援助を得てさらに1年間滞在して共同研究を行うことになった。本国際共同研究の目的である若手研究者の活性化、海外との共同研究の促進という目的も達成できるものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
バングラデシュでの体組成と筋力に関する本調査を予定より早く実施することができたので、今後、ヒ素曝露レベルとの関連、他の指標や病態のバイオマーカーとの関連などについてデータの解析を進める。データ解析の結果によっては、2023年度にさらに追加調査を実施する。また、バングラデシュでの調査で得られたヒ素曝露と筋肉量、脂肪量との関連に関する知見に基づいて、国内で実施する動物実験、細胞実験の方向性を修正すべきかどうかも検討する予定である。研究分担者の岡村は、米国側の共同研究者であるピッツバーグ大学のBarchowsky教授の研究室に長期滞在することが可能となった。したがって、動物・細胞レベルでの基礎研究については、ピッツバーグ大学との共同研究として進める予定である。バングラデシュの共同研究者であるHossain教授は、この共同研究に先立ってフルブライトの研究交流事業で筋肉の専門家であるBarchowsky教授の研究室に半年間滞在した。今後、バングラデシュでのヒ素汚染地域での調査で得られたデータ、特に筋肉量と筋力への影響をどのように解釈するかについて、Hossain、Barchowsky、姫野の3者が緊密に連絡を取りながら取りまとめを進める予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度は、研究代表者の姫野が予定より多く2回バングラデシュを訪問することにしたため、予定していた姫野への配分額(175万円)では不足することが予想された。そこで、前倒し請求(70万円)を行い、配分額を245万円とした。実際の姫野の支出額は2,820,441円だったので、不足分は前年度の繰り越し分から補填した。一方、3名の研究分担者は、2021年度、2022年度ともに、予算より少しずつ少ない支出となったため、全体として次年度への繰越金が生じた。 次年度は動物・細胞レベルでの実験が本格化するので、これらの予算を活用して実験を実施する。また、研究分担者の岡村は、2023年度にピッツバーグ大学に1~2か月滞在して共同研究を実施する予定である。米国への旅費、滞在費は物価高騰の影響を強く受けるので、多めの支出が必要となるものと予想され、繰り越した予算を活用する予定である。
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