2022 Fiscal Year Research-status Report
外国人の信用ネットワークにみるイタリア中世都市の市民概念ーー公証人文書の分析より
Project/Area Number |
21KK0215
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中谷 惣 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 准教授 (10623390)
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Project Period (FY) |
2022 – 2024
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Keywords | イタリア都市 / 外国人 / 信用ネットワーク / 信用取引 / 高利貸し |
Outline of Annual Research Achievements |
基課題は、ヨーロッパ中世都市において、市民と非市民のはざまにいた外国人ら周縁者の権利の享受とはく奪の実態を都市国家の政策から明らかにし、中世都市の市民概念の実相を解明するものである。本国際共同研究は、基課題を進める中で発見した外国人(他都市出身者)の信用ネットワークを、彼らが市民的存在となるために利用しえた社会的な資源、権利と捉え、この信用ネットワークの構造と特質を、公証人文書、私的帳簿、財産申告書、裁判記録等に収められた信用取引に関する共同調査を通して実証的に解明することを目指す。 本年度の後半よりイタリアに渡航し、ルッカ、フィレンツェ、プラート、フィエーゾレ等の文書館において、カリアリ大学のTanzini教授やピサ大学のDel Punta博士らと情報共有しながら、史料調査を共同で実施した。フィレンツェ国立文書館では、カタストと呼ばれる課税調査の際に提出された財産申告書を基に、各外国人の世帯が当時(1427年)有していた債権と債務を調査した。調査の途中ではあるが、近隣都市や遠方のイタリアの都市、さらにはドイツなどから来た外国人が、同郷人との間だけではなく、同業者との間で信用ネットワークを築いていた可能性が浮かび上がっている。ルッカ国立文書館および司教座附属文書館では、公証人文書や裁判記録に基づいて、ルッカに来ていた外国人の信用取引を調査した。手工業者として滞在する者についての信用取引とともに、貸金業者としてルッカに来ている他都市出身者の存在も見出され、外国人の信用ネットワークを多面的、多角的に考察する必要性が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トスカーナ地方のルッカ、フィレンツェをはじめとする各都市の文書館での史料調査を順調に実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きルッカをはじめとするトスカーナ諸都市の文書館において外国人の信用取引を調査する。一般の外国人だけでなく、貸金を生業とする外国人の取引や彼らの社会的地位にも注目する。
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Research Products
(3 results)