2022 Fiscal Year Research-status Report
アルツハイマー病の発症リスクを知る権利の医療実装:実証的な生命倫理学研究
Project/Area Number |
21KK0225
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
和氣 大成 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 研究員 (80815845)
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Project Period (FY) |
2021 – 2023
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Keywords | 応用倫理 / 実証的生命倫理学 / 実装研究 / アルツハイマー病 / 知る権利 / 自律 / 医学的対処可能性 |
Outline of Annual Research Achievements |
それまでアルツハイマー病の根本治療薬は存在しなかったが、2021年、原因物質とされるアミロイドβの蓄積を防ぐ薬剤(一般名アデュカヌマブ)が世界で初めて米国食品医薬品局(FDA)で迅速承認された。ただしその効果や承認へのプロセスに関する重大な懸念が広がった。わが国でも厚生労働省は継続審議として実質的に承認が見送られた。しかしその後、同じくアミロイドβを標的とした別の薬剤(一般名レカネマブ)は、認知機能の低下を抑制した十分なエビデンスを示すことに成功したとしてFDAに迅速承認され、科学コミュニティから驚きとともに受け止められた。わが国でも承認が目指されているが、対象となる患者が限られているためすべてのアルツハイマー病患者が使えるわけでなく、脳出血などの副作用のリスクも懸念されており、保険適用になった際でも財政をひっ迫させる恐れがある。さらに、レカネマブを用いたグループの認知機能の低下の抑制の割合は、プラセボを投与されたグループのそれに比べ27%少なかったと発表されたが、このベネフィットが上記のリスクと比較して妥当性があるのか、リスク・ベネフィット評価の観点からの議論も起こっている。以上の状況を踏まえ、まずは新たな根本治療薬であるレカネマブが、本研究が対象とする医学的対処可能性となりうるかの判断について、論文、学会発表などの資料を収集した。さらに、英国、欧州各国、米国、日本、アジアにおいて、神経科学や精神医学、応用倫理学など複数の関連分野における専門家から、オンラインや対面を含めて広く意見を集めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究が前提としているのは、アルツハイマー病には医学的対処可能性がないことであった。言い換えるならば、予防法や根本的治療法がないという科学コミュニティのコンセンサスが確立しているというものであった。しかしレカネマブが認知機能の低下を抑制する十分な科学的根拠を示すことに成功したとして、専門家集団のコンセンサスに変化が生じた。このため、まずはレカネマブの登場によってアルツハイマー病に対する医学的対処可能性が存在すると評価でできりかどうかについての調査する必要が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き新たなアルツハイマー病の根本治療薬の開発状況を間を置かずに広く収集する。同時に、新薬の登場を受けて日本の医療現場がアルツハイマー病の発症前診断をどのように進めようとしているかについても、専門家から十分な情報と見解を収集していく方針である。
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