2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21KK0242
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
水上 雄太 東北大学, 理学研究科, 准教授 (80734095)
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Project Period (FY) |
2022 – 2024
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Keywords | キタエフ / 量子スピン液体 / 圧力 / 格子欠陥 / 反強磁性 / マヨラナ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、キタエフ量子スピン液体候補物質において、結晶格子の点欠陥量や格子長などを可逆的に変化させることで、キタエフ量子スピン液体候補物質の基底状態を制御することを目的とする。現状、ほぼ全てのキタエフ量子スピン液体候補物質は、低温で磁気秩序状態を示すため、現実の物質においては基底状態として量子スピン液体を見出すことは非常に難しい。このような状況に対して、キタエフ量子スピン液体候補物質alpha-RuCl3においては、蜂の巣格子面内に7T以上の磁場を印加することで、磁気秩序を抑制し、無秩序状態を見出すという研究が多く行われてきた。この磁場誘起の無秩序状態においては、キタエフ量子スピン液体状態を示す実験的結果も多く報告されているが、無磁場または低磁場におけるキタエフ量子スピン液体の振る舞いはまだ分かっておらず、その実現が期待される。 alpha-RuCl3は、7Kでジグザグ構造を持つ反強磁性状態へと転移するが、本研究により点欠陥を導入することにより、その転移温度を半分以下程度まで抑制することに成功した。導入した点欠陥量は、1%にも満たなく、同様に磁気秩序を抑制する元素置換効果と比較すると、非常に少ない不純物量で磁気秩序を抑制できていることになる。 このような、格子欠陥を導入した系において、低温で比熱測定を行ったところ、キタエフ量子スピン液体におけるマヨラナ励起構造を示していることが分かり、格子欠陥を導入してもその振る舞いは強く残ることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた海外渡航期間において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により一部海外渡航への制限が生じた。このため、本来渡航先で行う予定であったものを海外共同研究者に協力頂き実施するとともに、オンラインでの会議等により対応した。しかしながら、本来現地で行うことができた実験研究が一部行えなくなったことにより、当初の予定よりも遅れが生じた。また、現在の物流のサプライチェーンの一部混乱による、実験備品の調達難が生じており、このことも先述したことに加えて遅れが生ずる事由となった。
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Strategy for Future Research Activity |
格子欠陥を導入するためには本研究の海外渡航先の大型装置を用いる必要があるため、今後は目的の渡航先への滞在を行い、より多くの格子欠陥を導入し磁気転移を抑制することを目指す。さらには、異なる格子欠陥量に対して、低温でのマヨラナ励起がどのように変化するか系統的に調べてゆく。 一方、格子長を制御した際の試料の変化も調べてゆく。特に、alpha-RuCl3の蜂の巣格子の異方的な変形に対する基底状態の変化を、低温精密バルク測定から探ってゆくことで、新規な手法によるキタエフ量子スピン液体の実現可能性を検証してゆく。
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[Presentation] 少数キャリア半金属 CeX における強相関電子状態2023
Author(s)
新井陽介, 黒田健太, 野本拓也, 筒井智嗣, 田中宏明, Yuyang Dong, 岩田拓万, 片山和郷, 水上雄太, 平井大悟郎, 辛埴, 久保田正人, 芳賀芳範, 鈴木博之, 宮坂茂樹, 田島節子, 有田亮太郎, 近藤猛
Organizer
日本物理学会2023年春季大会
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[Presentation] 不純物効果を用いたFe(Se,S)の超伝導ギャップ構造の研究2023
Author(s)
永島拓也, 石原滉大, 小林雅之, 六本木雅生, 松浦康平, 水上雄太, Romain Grasset, Marcin Konczykowski, 橋本顕一郎, 芝内孝禎
Organizer
日本物理学会2023年春季大会
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[Presentation] 18%S置換FeSeの超伝導状態における異常なスピン揺らぎ2023
Author(s)
Z.-Y.Yu, 中村昂矢, 猪股和也, 御栗丈虎, 沈暁玲, 松浦康平, 水上雄太, 笠原成, 松田祐司, 芝内孝禎, 上床美也, 藤原直樹
Organizer
日本物理学会2023年春季大会
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[Presentation] カゴメ格子系超伝導体CsV3Sb5における超伝導対称性2022
Author(s)
六本木雅生, 石原滉大, 田中優之介, 小河弘樹, 岡田昂, 劉蘇鵬, 向笠清隆, 水上雄太, 上床美也, R. Grasset, M. Konczykowski, Brenden R. Ortiz, Stephen D. Wilson, 橋本顕一郎, 芝内孝禎
Organizer
日本物理学会2022年秋季大会
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[Presentation] 極低温磁場角度分解比熱測定によるキタエフ候補物質 α-RuCl3におけるマヨラナ励起の検証2022
Author(s)
今村薫平, 水上雄太, 吉田悠生, 橋本顕一郎, 栗田伸之, 田中秀数, 藤本聡, 山田昌彦, 松田祐司, E.-G. Moon, 芝内孝禎
Organizer
日本物理学会2022年秋季大会
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[Presentation] NMRから見たS置換FeSe系の超伝導状態での異常なスピン揺らぎ2022
Author(s)
Z.-Y.Yu, 中村昂矢, 猪股和也, 御栗丈虎, 沈暁玲, 松浦康平, 水上雄太, 笠原成, 松田祐司, 芝内孝禎, 上床美也, 藤原直樹
Organizer
日本物理学会2022年秋季大会
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