2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21KK0242
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
水上 雄太 東北大学, 理学研究科, 准教授 (80734095)
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Project Period (FY) |
2022 – 2024
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Keywords | キタエフ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、キタエフ量子スピン液体候補物質に対して、結晶格子の点欠陥量を可逆的に変化させることで、キタエフ量子スピン液体候補物質の基底状態を制御することを目的とする。これまでの研究により、キタエフ量子スピン液体候補物質alpha-RuCl3において格子欠陥導入により反強磁性転移温度が低下することが分かっており、さらに元素置換系と比較すると非常に少ない欠陥量で転移温度が抑制されることが明らかとなっている。さらに、本研究では格子欠陥を導入した試料に対して磁場角度回転比熱測定を実施し、その低エネルギーの励起構造を調べたところ、純粋な系で観測された遍歴マヨラナ励起と同様な磁場角度依存性が観測された。この格子欠陥を導入した系をさらに詳細に調べると、遍歴的な励起に加えて、新たな局所的なマヨラナ励起が生じていることが比熱測定より明らかとなった。この成果について、米国科学誌のPhysical Review系雑誌において公表した。 また、反強磁性相のさらなる抑制を試みるために、海外出張を行い、格子欠陥導入の実験を実施した。現地での予備測定を行うことで、転移温度が低下していることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで電子線照射を実施し、反強磁性転移温度が低下した試料においても、磁場角度回転比熱測定により純粋な系と同様な遍歴マヨラナ励起を観測した。さらに、このような系においては、導入した欠陥により新たな局所的なマヨラナ励起が生ずることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、alpha-RuCl3を始めとするキタエフ量子スピン液体候補物質に対する格子欠陥導入を行い、反強磁性転移温度のさらなる抑制を試みる。これに伴い、反強磁性が抑制される臨界磁場のより低い系を実現するとともに、低磁場の振る舞いや、新たな励起構造について詳細に調べる。
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