2023 Fiscal Year Research-status Report
分散が弱いと協力は進化しやすいのか:寄生バチの性比調節における進化的応答の検証
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21KK0267
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
安部 淳 神奈川大学, 付置研究所, 研究員 (70570076)
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Project Period (FY) |
2022 – 2024
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Keywords | 性比調節 / 寄生バチ / Melittobia / 分散 / 協力行動 / 社会行動 / 種間比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
弱い分散により母親どうしの血縁度が増加する種や個体群ほど、協力的な雌偏向性比が進化するのかについて明らかにするため、アメリカの複数の調査地で野外調査を継続した。 昨年度は2, 3月に越冬世代を採集することができたので、今年度は8, 9月に調査を行い非越冬 世代を採集した。 フロリダ州南部のArchboldでは、寄主が使用した古い巣が多く確認でき、新たに営巣している寄主も確認できたが、Melittobiaの寄生はM. australicaによるブルードが1つ採集されたのみであった。フロリダ州北部のGainesville、ジョージア州のAthens、サウスキャロライナ州のColumbia、ケンタッキー州のWilliamsburgでは前回に引き続き多くの(すべて合計すると100以上の)M. femorataとM. australicaのブルードを採集することができた。マサチューセッツ州のBoston郊外でも新たに調査を行ったが、1地点で数ブルードのM. femorataが採集できただけであった。 採集したブルードを国内に持ち帰り、室内で生育個体を羽化させた。一部の個体で休眠誘導されたのか、未だに羽化していない個体も含まれるが、これまで羽化したブルードの性比を測定したところ、前回採集した越冬世代と顕著な差はこれまでのところ確認されなかった。しかし、それぞれの世代で大きくはないものの性比のばらつきがみられているので、今後の解析で血縁度等の個体群構造との関係が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
海外の野外調査では予想以上に多くのサンプルを確保することができた。しかし、それらの解析に時間を要してしまったが、今後アルバイトを雇用するなどして挽回したい。
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Strategy for Future Research Activity |
採集したサンプルを解析し、複数の種と個体群ごとに母親間の血縁度などの個体群構造を明らかにし、それらと性比調節の関係を検討する。 さらに、研究計画には含まれていないが、オナガコバチの仲間でもこれまでに採集しているサンプルで大きな性比のばらつきが存在することが確認された。これまでに採集されているサンプルをMIG-seq等で解析し、本種においても性比調節と雌の分散にともなう血縁度等の個体群構造との関係を検討する。
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