2023 Fiscal Year Research-status Report
脳腸相関からみた抑制型転写共役因子の自閉症スペクトラム障害発症メカニズムの解明
Project/Area Number |
21KK0274
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
天野 出月 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (10765275)
|
Project Period (FY) |
2022 – 2024
|
Keywords | NCoR1 / SMRT / 転写抑制型共役因子 / 発達障害 / グルコース輸送体 / 低血糖 |
Outline of Annual Research Achievements |
発達障害の発症率の増加が近年、世界的に深刻な社会的問題となっている。これまでの研究により、発達障害の発症要因として遺伝的素因や環境要因など様々な原因が明らかになってきた。様々な原因遺伝子が注目される中で、近年その遺伝子の一つとして転写抑制型共役因子(NCoRs)が報告されている。しかし、転写抑制型共役因子の中枢神経系における生理学的役割は不明である。そこで我々は神経細胞特異的に転写抑制型共役因子であるNCoR1/SMRTを欠失させたマウスを作出した。このマウスの解析を行ったところ、本ノックアウトマウスは自閉症スペクトラム障害(ASD)に類似した社会行動異常を伴った表現型を示すことが明らかになった。その一方でこの発見は、近年になって報告されている転写抑制型共役因子の異常を原因とした発達障害の症例報告と比べると軽度であり、中枢神経系以外の要因も示唆された。そこで、発達障害との関連性が注目されている腸脳相関に着目した。しかし、まず、腸管における転写抑制型共役因子の生理学的役割、特にNCoR1/SMRTについては、未だ不明な点が多い。そこで当該年度ではNCoR1/SMRTを腸上皮細胞特異的に欠失させたマウスを作製し、その生理学的役割を明らかにした。その結果、NCoR1/SMRTのダブルノックアウトマウスは欠失後から急激な体重減少と低血糖をもたらし、生存率の低下をもらした。この現象は小腸のグルコース輸送体の発現低下によってもたらされることがわかった。このことからNCoR1/SMRTが腸上皮細胞において生体恒常性維持に重要な役割を果たしていることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデル動物の作製及び、その生理学的特徴の評価を行うことができた。 また、本マウスから単離した腸上皮細胞を用いた遺伝子発現解析を行ない、そのメカニズムの一端を解析することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、ボストン大学と共同で作成しているNCoR1/SMRTの神経細胞特異的マウスは脳全体で発現しているマウスのため、領域毎の影響・差をみることが難しい。現在、発達障害の一つの原因として注目されている、小脳に注目しより領域を絞ったマウスモデルの開発を試みる。 また腸上皮細胞特異的NCoR1/SMRTノックアウトマウスは腸上皮細胞内における糖代謝の異常が、全身症状の主因であることが示唆されるが、NCoR1/SMRTによる直接作用であるかは不明である。ChiP-seqなどの手法を用いて、RNA-seqによって変動することが明らかになった遺伝子がNCoR1/SMRTによる直接的な制御を受けているのかを明らかにする。 今回作成したマウスから糞便を採取して、腸内細菌叢の差を確認する。しかし、どの時点でノックアウトするかの検証が必要であると考える。
|