2012 Fiscal Year Annual Research Report
有機半導体分子の合成とナノ組織化による高効率光電変換
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22000008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 栄一 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00134809)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 佳晴 株式会社三菱化学科学技術研究センター, 太陽電池プロジェクト, 主幹研究員 (10501380)
越野 雅至 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノチューブ応用研究センター, 研究員 (00505240)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 有機薄膜太陽電池 / 太陽光発電 / 選択的有機合成 / 低環境負荷プロセス / 有機エレクトロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は革新的有機薄膜太陽電池の実現に向けた新型有機半導体分子の開発と並行して,有機太陽電池における相分離の制御と解明に向けて分子レベルからアプローチを行った.(1)炭素架橋p-フェニレンビニレン:独自に開発した環化反応に基づき炭素架橋オリゴフェニレンビニレン化合物を合成した.非架橋構造のオリゴフェニレンビニレンと異なり鎖長によらずほぼ100%の蛍光量子収率を示し,電気化学的にも安定であることも見出した.(2)鉄触媒によるπ共役分子合成反応の開発:鉄触媒を用いたアルキンおよびジイン類のヒドロマグネシウム化を開発した.生成したアルケニルマグネシウムを更に反応させて種々のπ共役誘導体の合成に成功した.(3)有機太陽電池におけるアニール効果を解明:多成分系固体で形成される有機薄膜太陽電池のアニール効果を分子レベルで明らかにした.これまでフラーレン結晶が太陽電池に良いとされてきたが,今回加熱による脱溶媒で得られるフラーレンのアモルファス相が結晶性ポルフィリンとの分子界面の密着性を改善することで素子性能の向上に寄与できることを見出した.(4)固体表面における有機分子の結晶化機構:結晶化の種となる分子を結合したカーボンナノホーン粒子を用いて透過型電子顕微鏡により結晶生成を観察した.その結果,タネ分子の上に数個の分子からなるランダムな集合体がたくさん形成し,その中のごく一部のみが結晶へと成長するという結晶化の分子描像が示された.様々な分子の結晶化機構を明らかにすることで有機電子デバイスの高効率化を達成できると期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の当初目標である「半導体性を示す新型の平面共役分子やフラーレン誘導体の設計・合成,分子組織体のナノレベル構造制御法を開発し,高効率有機薄膜太陽電池実現に結実させる」については,既に相当程度達成している.加えて本年度は,有機低分子の相分離過程の解析と制御という当初予定になかった挑戦的課題についても成果を挙げており,電子顕微鏡を駆使した分子レベルの構造解析手法の開発の進展とあいまってさらに幅広い研究展開が行えるものと期待している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は太陽電池開発における一大課題である近赤外光利用に向けて新しい発想に基づくドナー分子の開発を進めると同時に,塗布プロセス特化や長寿命化という工業化まで視野に入れた課題に対して取り組み,更なる変換効率の向上を目指す.具体的には,(1)タンデム素子に最適化した近赤外光吸収ドナー分子の検討(2)高溶解性有機半導体材料の開発(3)フラーレン誘導体の熱安定性評価など,有機薄膜太陽電池にとどまらず他の有機エレクトロニクスへの波及効果も大きい課題について積極的に取り組む.また,鉄触媒などのユビキタス金属錯体を用いたπ共役有機半導体分子合成法の開発についても引き続き推進し,低環境負荷プロセスによる有機薄膜太陽電池の設計を探求する.
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Research Products
(27 results)