2010 Fiscal Year Annual Research Report
d-電子複合系の理論化学:新しい高精度大規模計算法による微視的理解と予測
Project/Area Number |
22000009
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
榊 茂好 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 研究員 (20094013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中尾 嘉秀 京都大学, 工学研究科, 助教 (40362462)
永瀬 茂 自然科学研究機構, 分子科学研究所・理論分子科学研究系, 教授 (30134901)
江原 正博 自然科学研究機構, 計算科学研究センター, 教授 (80260149)
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Keywords | 高精度大規模電子状態計算法 / d電子系 / 遷移金属化合物 / 触媒反応機構 / 励起状態 / 多核金属錯体 / 超原子価結合 / ナノ分子系 |
Research Abstract |
配位子の電子的効果を考慮する有効ポテンシャルは、これまでのものに加え、一般的な配位子であるPPh3などについて開発した。これらのポテンシャルは結合性、構造、反応の理解と予測に有効である。また、溶媒効果を取り込むため、遷移金属錯体用のポテンシャルを開発し、3D-RISM計算を行う体制を整えた。実際の遷移金属元素を含む複合電子系の理論研究としては、白金二核錯体を取り上げ、DFT法、TD-DFT法、broken-symmetry DFT法により基底状態、励起状態の構造、結合性を明らかにし、さらに、リン光スペクトルが架橋配位子の性質でどのように制御可能か、理論的に解明した。また、非常に短いFe-Fe、Fe-Mn、Fe-Cr結合をもつ二配位遷移金属化合物の構造、電子状態、スピン状態を理論計算で明らかにした。遷移金属と高周期典型元素を含む系として、Wヒドリドシリル錯体の理論的研究を行い、新しい動的挙動を理論的に予測した。反応過程に関する理論的研究としては、非ヘム鉄酵素およびモデル錯体の励起スペクトルと活性の関連をMS-CASPT2法で解明した。触媒反応については金属ポルフィリンによる光励起エポキシ化反応、第10族金属による芳香族炭化水素の直接クロスカップリング反応を取り上げ、反応機構、中心金属の役割を明らかにした。前者ではDFT法、CASSCF法を用い、活性種の電子状態を解明し、さらに、反応の微視描像の理論的解明に成功した。後者については、これまで明確でなかった添加材がどのように直接クロスカップリング反応で役割を果たしているか、を分子論的に明らかにした。さらにナノ系への理論化学アプローチを行い、化学修飾による常磁性金属内包フーラレン(La@C82)の配向制御と集積化により、これまでに報告された電子共役系有機材料より格段に高い電荷輸送特性をもつ有機導体を開発し、新規な有機材料開拓の道を開いた。
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Research Products
(14 results)