2012 Fiscal Year Annual Research Report
半導体光増幅素子を用いた革新的次世代PET技術の開発実証
Project/Area Number |
22220010
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
片岡 淳 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (90334507)
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Project Period (FY) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | 次世代PET技術 / 画像診断システム / 光半導体増幅素子 / MPPC |
Research Abstract |
本年度は要素技術開発からシステム開発、PET装置としての応用に至るまで、重要かつ大きな進展が得られた。まず8ch からなる小動物用MPPC-PETユニットを製作し、大阪大学医学部で脳ファントム・生体マウスを用いた臨床実験を行った。結果、視野中心で0.9mm (FWHM)のサブミリ解像度を持つことを実証した。さらに、シンチレータをLYSO/GAGG の2層構成とすることで簡易型DOI検出器を製作し、視野端(中心から25mmオフセット)した地点の解像度を3.7mm から2.7mmに向上することに成功した。今後は、独自に考案した3次元シンチレータ式検出器(特願2011-289480)を用いることで、視野端においても更なる解像度の向上を目指す。なお、本技術はPETに限らず放射線計測一般にブレークスルーをもたらすもので、その一例として携帯型高感度コンプトンカメラを創案し(特願2012-157920)、新たなJST先端計測プロジェクトがスタートした。また、2012年度の先端技術大賞(特別賞)を受賞した。TOF測定についてはver.3のアナログLSIを製作し、単体で200-300 psec の優れた時間分解能を持つことを実証し、また16chごとのゲイン補正、タイミング調整機能が正しく動作することを確認した。H25年度は引き続き本LSIを用いたセンサー全体のTOF応答を調べる。最後に MRIとPETの併用について、MPPC-PETユニット二つを対向し、4.7Tの小型動物用MRI中(RFコイル外側)で動作させることで(1) MRIがPET画像に与える影響 (2) PET がMRIに与える影響の双方を定量的に調べた。結果、PET画像には顕著な悪化も見られず、MRIのS/N が僅か5%低下するだけで実用上は何の問題も生じないことが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたコンポーネント(要素技術)レベルの開発は概ね終了し、既に8ユニットからなる小動物用PETデモ機の開発まで終了している。まず、デモ機を利用した実験室レベルの評価実験(二つの点線源22Naを使用)により、PET同径方向の解像度は実測・シミュレーションともに完全に一致し、予想していた性能が確かめられた。続いて阪大医における臨床実験では脳ファントムや生体マウスなど現実的な(大きさを持つ)測定対象について目的としたサブミリ解像度が得られた。これは、当初の計画で予定していなかった大きな進捗である。さらに、ハードウェア開発だけでなく、ほぼリアルタイムで表示可能な画像再構成プログラムの開発も同時並行で進んでいる。MRI との併用についても2ユニットでは実証が完了しており、今後はこの技術を拡張して8ch からなるデモ機を用いたMRI-PETの相互作用実験を予定している。TOF-PETについても、超高速LSIの開発は完了しており、平成25年度の早い時期に、当初予定した2ユニットを用いた対向試験で、実機評価が可能と見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度以降は我々が独自に開発した3次元式DOIセンサーを既存システムに融合させること、LSI からのタイミング信号をデータ収集システムに取り込んでTOF-PETとしてのシステムを新たに構築することに主な時間を費やしたい。特にデータ収集ボードの改修や新規開発が必要になると見込まれる。上下2層のMPPCからの信号を読み込み、その和を取ると同時に波高比を求める新たな回路設計を始めている。8ch からなるMRI-PETについては、既に試験した予備実験システムを2ch から8ch に拡張し、センサー全体を非磁化対策する、ないしは5m 程度の同軸ケーブルを利用することで、問題なく実現できると予想している。磁気シールドケースの設計や特注ケーブルのなどは既に完了している。高速LSIについては、タイミング信号をいかに効率よく(時間を短縮しながら)調整するかが鍵であり、この部分をクリアすれば直ちに、実機を用いた試験が行える状況にある。
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