2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22221008
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
河崎 善一郎 大阪大学, 産業科学研究所, 招へい教授 (60126852)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 智 気象庁気象研究所, 気象衛星・観測システム研究部, 研究官 (00571564)
牛尾 知雄 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50332961)
森本 健志 近畿大学, 理工学部, 准教授 (60403169)
中村 佳敬 神戸市立工業高等専門学校, 電気工学科, 講師 (70609817)
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Project Period (FY) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | 降水 / レーダ / 雷放電 |
Research Abstract |
本研究はレーダ観測,雷放電観測,データ処理システムの構築・データ解析の3つの分野に分かれている。まず,レーダ観測においては,製作した広帯域レーダを平成23年度に滋賀県長浜市に設置し,それ以来夏季だけでなく冬季雷観測も継続的に実施している。冬季特有の局所的なドップラー速度に捉えることにも成功しており、目標としていたレーダ観測体制は整いつつある。また一方,夏季積乱雲の観測では,3台のレーダを用いたネットワーク観測に成功した。さらに,昨年度に完成したフェーズドアレイレーダを併用した観測を行い,同時データの取得に成功,相互比較を行った結果,構築したレーダネットワークが,極めて時空間的に高分解能で降雨システムを分解していることが示された。 雷放電観測では,申請段階で予定していたVHF帯干渉計だけではなく,より広く観測することのできるLF帯干渉計も開発し,広帯域レーダ観測域のほぼ全域をカバーする雷放電観測網を整えてきた。また各サイトは公共無線LANでインターネットに接続しており,大学の研究室にいながらにして,観測機の操作およびデータのダウンロードが自動できるまで整備してきた データ解析においては,構築中のレーダネットワークが問題なく運用できていることを確認するためにまず他装置との比較を行った。つまりKu帯レーダとC帯・X帯レーダのデータ比較やVHF帯干渉計とLF帯広帯域干渉計の相互比較をおこなった。その結果,レーダ,干渉計共に問題なく動作していることを確認した。さらに,レーダデータと雷放電データの比較により,積乱雲内の電荷構造に関する新たな知見が複数得られておりデータ解析は順調に進んでいると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究開始から3年間で広帯域レーダ4機,VHF広帯域干渉計5機,LF広帯域干渉計9機からなるレーダネットワークを整備した。これらの観測地点は可能な限り高速通信網を介してインターネットに接続し,観測装置の遠隔監視・操作およびデータ移送を行える体制とした。このうち滋賀県長浜市に設置したレーダ,干渉計は共に冬季積乱雲を観測するために設けたサイトである。また,予定通り大阪平野内に設置された広帯域レーダのサイトにはディスドロメータ(雨滴粒径分布測定装置)を設置した。そして,それらの機器をすべて起動した総合観測を夏季を中心に実施し,データを得ることに成功した。また,Ku帯は降雨減衰が他の周波数帯に比して,顕著になるため,ベイズの定理に基づいたネットワーク環境下における降雨減衰補正手法の開発を行い,その有効性を示すことが出来た。またさらに,これらのデータを解析した結果,甚大な被害をもたらす積乱雲の成長過程と雷放電イベントが同期することを示すことが出来た。これはアメリカ地球物理学会のResearch Spotlightに選ばれ,大きな注目を浴びることになった。以上のことから,現在までの達成度は,おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後,レーダをさらに一台追加し,2台での冬季積乱雲の観測と,3台による夏季積乱雲の観測を実施する。雷放電の観測を行うLF帯広帯域干渉計を,常時稼働すると同時に,高分解能レーダ観測と高分解能雷放電観測を同時実施する。さらに,大阪大学吹田キャンパスに設置したXバンドフェーズドアレイドップラーレーダを併用し,総合観測を実施する。これによって得られたデータを総合的に解析し,雷放電の挙動と積乱雲内の構造を比較しながら,雷予知や豪雨の前兆現象を探る詳細な解析を行う。LF帯の雷放電位置標定装置に関しては,広域にわたって放電の位置標定を行うことは成功しているが,放電点の数を増やすことが課題となっている。そのため,標定手法あるいは信号処理手法の改良によって,より詳細な放射源推定のアルゴリズムを構築したい。また一方,現在,大阪地域は,Kuバンド,Xバンド,Cバンド(気象庁のレーダデータ)の3周波数のレーダシステムが同時に稼働する世界的に極めてユニークな地域となっている。これらのレーダデータを相互利用する研究も進めたい。
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Research Products
(12 results)