2012 Fiscal Year Annual Research Report
多自由度放射光X線二色性分光による強相関系界面新規電子相の研究
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22224005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤森 淳 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10209108)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
組頭 広志 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (00345092)
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Project Period (FY) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | 遷移金属酸化物 / 界面 / 軟X線磁気円ニ色性 / 光電子分光 / 軟X線二色性 |
Research Abstract |
1.昨年度完成した多自由度軟X線磁気円二色性(XMCD)測定装置を用いて,通常のXMCD測定の他に,横方向XMCD(T-XMCD),X線磁気線二色性(XMLD)測定を行えるようにした。 2.強磁性金属La0.6Sr0.4MnO3薄膜のT-XMCD測定により,スピン偏極したMn 3d電子がSrTiO3基板からの圧力により面内方向に広がって分布していることを示した。 3.強相関金属SrVO3薄膜が示す膜厚に依存した金属-絶縁体転移(MIT)の近傍で強相関金属量子井戸状態がどのように変化するかを調べるために,臨界膜厚(2-3 )ML近傍の試料のin-situ角度分解光電子分光を行った。その結果, MIT近傍ではSrVO3層内に電子が局在していることが明らかになった。 4.電荷不連続性の有無によるLaNiO3超薄膜の電子状態・軌道状態について調べるために,SrTiO3基板(電荷不連続有り)およびLaAlO3基板(電荷不連続なし)上に成長したLaNiO3についてその光電子分光測定およびX線吸収分光測定を行った。その結果,電荷不連続の有無によって極薄膜領域の電子状態に明確な違いがあることを明らかにした。 5.マルチフェロイック酸化物BiFeO3にCoをドープして強磁性成分を増大させた薄膜試料についてXMCD測定を行い,結晶構造が六方晶から正方晶に移るCo濃度でFeの磁気モーメントの強磁性成分が増大することを見出した。 6.強磁性金属SrRuO3薄膜の電子状態および磁性を放射光X線光電子分光とXMCDにより測定した。光電子分光とクラスターモデル解析から,Ru 4dと酸素2p軌道の非常に強い混成が定量的に明らかになった。XMCD測定からは,膜厚の関数として起こることが理論的に予想されている反強磁性-強磁性転移を支持する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多自由度軟X 線円二色性測定装置を用いた強磁性酸化物薄膜の新規実験データが得られ始めており,論文発表を急いでいる。酸化物薄膜,界面の光電子分光を用いた研究,既存の軟X 線円二色性測定装置を用いた強相関系ナノ構造・界面・超薄膜の研究も順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り,多自由度軟X 線円二色性(XMCD)測定装置を用いて,酸化物を中心とした強相関系界面・ナノ構造・超薄膜の研究を進めると同時に,装置の機能拡張を行う.光電子分光,共鳴軟X線散乱を用いた測定も並行して継続する。新XMCD装置を用いた研究では,マンガン,鉄などを含む磁性の強い系以外に,チタンやニッケルなどを含む磁性の弱い系に対象を広げていく.
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Research Products
(47 results)