2012 Fiscal Year Annual Research Report
分子地球化学:原子レベルの状態分析に基づく地球と生命の進化史の精密解析
Project/Area Number |
22224011
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
高橋 嘉夫 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10304396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂口 綾 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00526254)
植木 龍也 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10274705)
谷水 雅治 独立行政法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, サブリーダー (20373459)
光延 聖 静岡県立大学, 環境科学研究所, 助教 (70537951)
勝本 之晶 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90351741)
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Project Period (FY) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | 分子地球化学 / XAFS / バクテリア / 希土類元素 / バイオマーカー / リン酸 / DNA / 生体必須元素 |
Research Abstract |
本研究では、元素の化学種を調べ、その結果が地球化学的にどのような意味を持つかを念頭において研究を進めており(分子地球化学)、本年は主に微生物と希土類元素の相互作用に関する研究を行った。希土類元素 (REE) とバクテリアとの相互作用について、バクテリアと水の間の希土類元素の間のREE分配パターンは、中希土類元素 (MREE) 付近に極大を持ち、重希土類元素 (HREE) で著しく増加する特徴的な形状を示す(Takahashi et al., 2007)。この研究に基づき、REEパターンが天然のバクテリア相の指標となることをより明確に示すために、EXAFS法 からバクテリア表面のREE吸着サイトなどを特定する研究を行った。様々なREEでREE-O結合距離を比較すると、軽希土類元素 (LREE) 及びMREEの吸着種は少数のリン酸基との結合距離およびカルボキシル基との結合距離と類似するが、HREEでは複数のリン酸基との結合の場合のREE-O距離と類似し、HREEでREE-O結合距離が急激に短くなることが分かった。これは、HREEがバクテリアと強く結合することを示しており、これがバクテリアのREEパターンにおけるHREEの濃集をもたらすと考えられる。天然のバイオフィルムやバイオマットなどのREEパターンに見られるHREEの濃集も、これらのバクテリアに関連した物質に含まれるリン酸基が原因となっていると考えられた。このHREEの濃集から、天然においてバクテリア活動の関与した相を特定するツール(バイオマーカー)としてREEパターンを利用できる可能性があることが分かった。なおこの研究から発展して、リン酸基とREEの親和性に着目して、DNAを用いたレアアースの分離回収が可能であることを示す研究(Takahashi et al., 2012)も進展し、特許3件を申請するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ここで示した希土類元素と微生物の相互作用に基づいて、REEパターンがバイオマーカーとして利用できることを示した以外に、その基礎的知見を出発点としてDNAなどを用いたREEの回収にまで研究を発展させ、特許出願に至ったことは、計画にはなかったことであるが、基礎と応用をつなぐユニークな成果であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
11で示した通り、当初の予定になかった幅広い研究が展開できており、これらを成果としてきちんと残していることが重要である。また当初計画で予定している地球の酸化還元環境が大きく変動した時期の堆積岩の研究のための野外調査がまだ十分でないので、2013年度には、こうした調査を実現させたい。
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