2013 Fiscal Year Annual Research Report
分子地球化学:原子レベルの状態分析に基づく地球と生命の進化史の精密解析
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22224011
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
高橋 嘉夫 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10304396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂口 綾 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00526254)
植木 龍也 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10274705)
谷水 雅治 独立行政法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, サブリーダー (20373459)
光延 聖 静岡県立大学, 環境科学研究所, 助教 (70537951)
勝本 之晶 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90351741)
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Project Period (FY) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | XAFS / モリブデン / タングステン / セリウム / セレン / バライト |
Research Abstract |
これまでの研究で、以下の通り過去の地球の酸化還元状態の解析において有効と期待される地球化学的ツールを開発することに成功した。 (1) 海洋でのMoの鉄マンガン酸化物への吸着(分配比、吸着種の構造)から、海水中のMoの濃度や同位体比の変動を予測できることを示した(Kashiwabara et al., 2011)。 (2)Moと同族であるWについて、高感度XAFS法を適用し、Moと同様に吸着挙動を調べ、Mo/W比の分別や、天然でW同位体がどのように分別するかを予想した(Kashiwabara et al., 2013)。 (3)酸化的環境(酸化物ワールド)と還元的環境(特に硫黄を含む場合である硫化物ワールドに着目)でMoとWの水溶解性を比較し、地球が酸化的になると共に海水中のMo/W比が増大してきたことを示した(Takahashi et al., in prep.)。これらのMoやWの化学種の構造などについて、分子軌道法によるモデル化を行い、それらの化学反応の特徴を理解する研究を進めた(Tanaka et al., 2013)。 (4) Ce安定同位体比の分別の程度が、Ce(III)からCe(IV)への異なる酸化過程によって違うことを利用して、Ce安定同位体比とCe異常を組み合わせることでより定量的な古酸化還元状態の推定が可能であることを示した(Nakada et al., 2013)。 (5) バライト中のSe(VI)/Se(IV)比が共存する水中のSe(VI)/Se(IV)比を反映することを見出し、この比を用いたバライト-セレンredox計を開発した(Tokunaga et al., 2013)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた、(i) MoとWの濃度比および同位体比を利用した地球化学的ツールの開発、(ii) セリウム安定同位体比を利用した地球化学的ツールの開発、(iii) 当初計画にはなかったバライト中のセレンを用いたEh計の開発、など多彩な地球化学的ツールの開発に成功した。またこれらの系でみられる元素分配や同位体分別について、量子化学計算を用いた定量的な解釈が可能となった。これらを基礎に、重元素の同位体比の分別について、物理化学的に予測することができ、これまでの現象論的解釈から一方進んだ同位体分別の解釈に貢献する成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究での提案内容のうち、分子地球化学的ツールを天然試料に適用し、その有用性を示すと共に、地球の大気進化(酸素濃度増大)に関するより詳細な情報を得る。国内でのアナログ的研究サイトとして研究している三瓶温泉でのセリウム同位体比を用いた研究成果については、現在論文を投稿中である。また海外の研究サイトとして重要な南アフリカTransvaal Supergroupの縞状鉄鉱床・マンガン鉱床については、2013年12月に現地調査を行い試料を採取したので、その試料の分析・解析を今後進める。
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Research Products
(77 results)