2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22225001
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
篠原 久典 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50132725)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北浦 良 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50394903)
宮田 耕充 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 助教 (80547555)
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Keywords | カーボンナノチューブ / ナノワイヤ / 金属内包フラーレン / ピーポッド / HRTEM / 電子物性 |
Research Abstract |
本研究では、新規ピーポットとして、コロネン、ペリレン誘導体を始め8種の多環芳香族内包ピーポット、6種の典型元素を含む分子を内包したピーポット、3種のアダマンタン誘導体を内包したピーポット、Yb, Eu等の希土類金属、アルカリ土類金属(Rb, Cs)、アルカリ金属(Ca,Sr,Ba)、を内包したナノワイヤー内包ピーポットの創製に成功した。この様な広範な物質を対象とした系統的なピーポットの合成は他に例がなく、今回の成果によってピーポットのナノサイエンス・ナノテクノロジーの可能性を探るための土台を築くことができたと言える。また、本研究を通して、ピーポットを合成するためには、不純物の少ない高品質カーボンナノチューブを用いることに加え、内包させる物質の蒸気圧および炭素との濡れ性が十分に確保される必要があることが明らかとなった。これは、新規ピーポットをデザインし合成する際に重要な指針を与えるものであり、さらなるピーポット創製の基盤となる知見である。 また、合成した新規ピーポットの構造解析に、球面収差を補正した高分解能電子顕微鏡(AC-TEM)を適用した。種々の検討を行った結果、軽元素が主体のピーポットでは、低加速電圧(80keV)の高分解能観察(HRTEM)法が有効であり、フォーカスを変えることでカーボンナノチューブの螺旋度の決定と内包物質の高分解能観察を両立させることが可能であることがわかった。また、原子番号の大きな元素を含んだピーポットの構造解析には、暗視野法の一種であるSTEM-HAADF法が非常に有効であることも明らかとした。この手法を用いると、軽元素であるカーボンナノチューブ中の炭素原子はほぼ透明となり、内包された物質の構造を選択的に、高コントラストの輝点として原子ごとに直視することが可能になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
広範な物質を対象とした系統的なピーポットの合成は他に例がなく、今回の成果によってピーポットのナノサイエンス・ナノテクノロジーの可能性を探るための土台を築くことができたと言える。達成度はほぼ100%と言える。また、合成した新規ピーポットの構造解析に、球面収差を補正した高分解能電子顕微鏡(AC-TEM)を積極的に適用して種々の検討を行った結果、軽元素が主体のピーポットでは、低加速電圧(80keV)の高分解能観察(HRTEM)法が有効であり、フォーカスを変えることでカーボンナノチューブの螺旋度の決定と内包物質の高分解能観察を両立させることが可能であることがわかった。これは計画をしていたこととは言え、かなりチャレンジングなテーマであり実際に実現できたことはH23年度の大きな収穫である。 さらに、原子番号の大きな元素を含んだピーポットの構造解析には、暗視野法の一種であるSTEM-HAADF法が非常に有効であることも明らかとしたことは非常に重要な業績である。なぜなら、この手法を用いると、軽元素であるカーボンナノチューブ中の炭素原子はほぼ透明となり、内包された物質の構造を選択的に、高コントラストの輝点として原子ごとに直視することが可能になるからである。 以上の理由からH23年度の進捗状況は計画通りであったと言える。ピーポットを経由することによるカーボンナノチューブのナノリアクター応用は、新規かつ重要な低次元ナノ物質を生み出す極めて有用な手段となる。本手法で初めて達成されたナノ物質も多数あり、これら新規物質群を中心とした新たなサイエンスを展開する礎が築くことができたことが、本研究の成果として極めて重要である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのピーポット創製研究を推進する中で、内包させる原子・分子の種類によって、収率(内包率)が大きく異なることが明らかとなった。 今後は、内包条件の最適化を進めると共に、内包率とカーボンナノチューブとの相互作用に付いて理論計算を行い、収率と相互作用の強さについて定量的な関係性を明らかにする予定である。計算には、密度汎関数理論を用いた分子軌道法およびバンド計算を適用し、これまでに合成を行ったものについて系統的に調べたい。 また、有機物を用いたピーポットでは、透過型電子顕微鏡像が不鮮明であることが多く、内包率を定量化することが困難である場合が多いことも明らかとなった。これを解決するために、観察条件(加速電圧、照射条件、デフォーカスの条件)を最適化すると共に、球面収差を補正した電子顕微鏡による原子分解能観察も進める予定である。 さらに、マルチスライス法を用いた電子顕微鏡像のシミュレーションを行い、撮影した像の定量的な解釈も進める。さらに、電子線回折法を用いることで、平均的な内包率の算出も行う予定である。 これらを全て併用することで、各内包条件における収率を定量的に明らかとし、条件の最適化を効率的に行うとともに、内包率に及ぼす相互作用の影響を解明したいと考えている。また、創製に成功したピーポットを用いて、ピーポットを経由することによるカーボンナノチューブのナノリアクターへの応用を進める。まずは、各種ピーポットを種々の温度で加熱することで、カーボンナノチューブ内部で熱融合反応を誘起し、新規な低次元物質を創製したい。 透過型電子顕微鏡、ラマン分光法を利用して、反応を逐次追跡すると共に、最終生成物の構造を決定する予定である。ナノリアクターへの応用に関しては、容易に熱融合反応を起こす有機分子を中心に検討を進め、徐々に対象を広げて行く予定である。
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Research Products
(39 results)