2011 Fiscal Year Annual Research Report
MDC・SHGによる誘電現象としての有機薄膜の電子輸送・分極構造評価と素子特性
Project/Area Number |
22226007
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岩本 光正 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (40143664)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
間中 孝彰 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (20323800)
田口 大 東京工業大学, 理工学研究科, 産学官連携研究員 (00531873)
山本 哲也 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (40610027)
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Keywords | 分極構造評価 / キャリヤ輸送 |
Research Abstract |
「MDC・SHGによる有機界面膜のフレキシブル性評価とマクスウェル応力による量子的ドメイン形状制御」分子膜において、面内ドメイン内に 形成された分極構造が、ドメインの形状を左右する点も、分子膜のフレキシブル性が反映された特徴である。本研究項目では、この分極構造を可視化することで、ドメイン形状に与える影響を検討した。平成22年度から継続して水面上単分子膜のドメイン分極構造イメージングシステムを構築した。このシステムは、フェムト秒波長可変レーザを用いて分極構造を可視化するSHGイメージング系と、ドメイン形状を可視化するブリュースター角顕微鏡(BAM)からなっている。これらを、小型のLBトラフと組み合わせ、水面上単分子膜の圧縮・拡張過程に伴うドメイン形成および その成長を観測できるようにセットアップした。 「3電極系の有機FET構造を用いた柔構造分子膜素子のキャリヤ輸送の可視化と伝導解析」本研究項目では、顕微SHG法により有機FET構造 素子のチャネル内電界分布を評価し、さらに時間分解計測と組み合わせることでキャリヤ注入、蓄積、輸送過程を分離測定・評価する。本年度は、計画に従い、様々な形状をもつπ共役系分子で構成されるFET構造素子を試作し、デバイスの動作状態に応じたチャネル内電界分布を可視化・評価した。また、トラップがキャリア輸送に及ぼす影響を調べるため、プレフィリングと呼ばれる手法を新たに開発した。 「2電極系有機積層構造素子のキャリヤ輸送のダイナミックスと再結合・発光に至る過程・劣化機構」本研究項目では、有機EL素子のEL発光に至るキャリヤ挙動の観測と解析手法の確立を目指している。交流駆動下のEL発光のスペクトルについて検討し、交流矩形波電圧駆動による長波長側のピークを観測した。この原因がAl電極近傍のトラップ準位に捕獲された正孔にあることを明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、『有機材料のフレキシブル性に潜む物理を究め、分子形状・配列に起因する界面現象・量子的現象を制御可能として、有機デバイス物理・工学へと学術分野を開拓すること』を目指したものであり、その研究はキャリヤのダイナミックな挙動を誘電分極現象として捉えて可視化する技術の開発とその解析技術に支えられている。これまで、ダイナミックに様々なデバイス中を移動する電子・正孔のキャリヤ挙動が可視化できる技術を確立し、トランジスタ、EL、太陽電池など主要な有機デバイス中のキャリヤ挙動が新しい手法により評価されるようになっていること、フェムト秒波長可変レーザを用いて分極構造を可視化するSHGイメージング系を世界で初めて構築し、ドメイン形状と分極構造を可視化することに成功したことなどより、これらの技術開発と解析技術開発が順調であると判断している。特に前者では、有機材料のフレキシブル性に関連した有機デバイスの評価も可能となるなど、開発した技術によって新しい知見が得られるようになり、後者からは、これまでに導いてきたドメイン形状方程式の解との対応について検討できる見通しが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、『有機材料のフレキシブル性に潜む物理を究め、分子形状・配列に起因する界面現象・量子的現象を制御可能として、有機デバイス物理・工学へと学術分野を開拓すること』を目指したもので、その研究はキャリヤのダイナミックな挙動を誘電分極現象として捉えて可視化する技術の開発と、その解析技術に支えられている。平成23年度までの研究で、これらの技術開発と解析技術開発が順調であったことから、平成24年度以降の研究は、当初研究計画に沿いながら、新しい試みも追求しながら進める予定である。特に、本研究の特徴は「電子・双極子・四重極子」を原因とする有機材料内の分極現象に着目し、フレキシブルな有機材料の電子輸送・双極子に由来する分極構造を統一的な視点から取り上げて実測(可視化含む)し、有機デバイスを評価・解析する手法を開拓することである。有機物の特徴を捉えるため、(i)分子形状とフレキシブル性、(ii)ナノ界面の特異性、(iii)分極現象としてのキャリヤ挙動の3点に着眼しているので、この点を常に認識し、対象が「電子・双極子・四重極子」のいずれにあるかを踏まえながら、これらを起点とする誘電分極現象として捉えて、個々の項目で進める研究の相関性を確認しながら進める計画である
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Research Products
(90 results)