2013 Fiscal Year Annual Research Report
MDC・SHGによる誘電現象としての有機薄膜の電子輸送・分極構造評価と素子特性
Project/Area Number |
22226007
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岩本 光正 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (40143664)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
間中 孝彰 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (20323800)
田口 大 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (00531873)
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Project Period (FY) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | キャリヤ輸送 / 電界分布 / 分極構造評価 |
Research Abstract |
「MDC・SHGによる有機界面膜のフレキシブル性評価とマクスウェル応力による量子的ドメイン形状制御」本研究項目では、昨年度に引き続き、色素を含有したリン脂質分子の水面上単分子膜における分極構造の評価を継続した。その際、これまで別々に観測していたブリュースター角顕微鏡とSHGイメージングを同時観測できるように光学系を改良し、実際に同時観測できることを確認した。また、従来より問題となっていた水面の振動による像のぼやけも除振システムを導入することで、水面の振動を抑制して観測が可能となった 「3電極系の有機FET構造を用いた柔構造分子膜素子のキャリヤ輸送の可視化と伝導解析」本研究項目では、顕微SHG法により有機FET構造素子のチャネル内電界分布を評価し、さらに時間分解計測と組み合わせることでキャリヤ注入、蓄積、輸送過程を分離測定・評価している。本年度は、プレフィリング法による有機FETチャネルのトラップ評価を試み、絶縁膜の違いによりプレフィリングに必要となる電圧が変化することが明らかとなった。これにより、絶縁膜の違いによるトラップ密度の違いや、またエネルギー的な深さに関する情報を得ることができた。一方で、トップ電極に円形電極を用いることで、配向した高分子半導体薄膜や単結晶薄膜におけるキャリア輸送の異方性を直接可視化することに成功した。 「2電極系有機積層構造素子のキャリヤ輸送のダイナミックスと再結合・発光に至る過程・劣化機構」本研究項目では、有機ELにおいて膜厚方向の電界分布を評価するシステムを新たに導入し、微小な測定スポットをスキャンさせることで劣化状態などの面内分布を評価することができた。また、有機太陽電池による研究では、バルクヘテロ太陽電池におけるn型およびp型層内部の電界の選択的な評価に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、『有機材料のフレキシブル性に潜む物理を究め、分子形状・配列に起因する界面現象・量子的現象を制御可能として、有機デバイス物理・工学へと学術分野を開拓すること』を目指したもので、その研究は「キャリヤのダイナミックな挙動を誘電分極現象として捉えて可視化する技術の開発とその解析技術」に支えられている。この研究の核となる新規技術開発と解析技術開発は順調であり、同時に新しい発見も続いた。具体的には、第1として、ダイナミックにデバイス中を移動する電子・正孔のキャリヤ挙動を可視化する技術を確立し、この技術により研究の4つの大きな目標を達成した。(1)有機トランジスタのキャリヤ注入・蓄積・輸送の基本的過程の分離評価、(2)両極性動作する有機デバイスのキャリヤ挙動の直接評価、(3)有機ELデバイス、有機太陽電池など積層デバイスの各層のキャリヤ挙動の評価、(4)マックスウェル・ワグナー効果素子としてデバイス評価手法の解析法の確立。一方、第2として、双極子の作る場が起源となって界面分子膜ドメイン内に形成される分極構造を可視化する技術として、フェムト秒波長可変レーザを用いて分極構造を可視化するSHGイメージング系の構築を世界で初めて達成した。その結果、ドメイン形状と分極構造を可視化に成功し、理論解析で導いたドメイン形状方程式の解との対応について検討できる見通しが得られた。 以上、本研究達成のための重要な課題は克服され、研究達成の見通しを得た。そればかりか、エネルギーの視点からのアイデアを多面的に盛ることでさらに研究は加速され、新学術展開に繋がるとの見通しも得た。さらには、中間評価でA+評価(当初目標を超える研究の進展があり、期待以上の成果が見込まれる)の評価を、研究展開の後押しとなる意見付きにて頂いた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目標は、キャリヤのダイナミックな挙動の可視化に向けられ、その到達点は、実空間での電子・正孔キャリヤの挙動の直接観測および双極子の作る分極像の観測にある。そして、これらを元にキャリヤ挙動(電子や双極子)が解析される。しかし、この研究を進めたとしても、1.電子はどの軌道をどのような電子状態で移動するのか、2.界面像は観測されるが、実際に圧力変化に対応して渦状の形状を持って量子的に変化するドメイン像が現れるという根本的理由に答えることはできない。こうした問題を解決する技術を育て解析手法を確立してこそ、国内外で待望される『有機材料のフレキシブル性に潜む物理を究め、分子形状・配列に起因する界面現象・量子的現象を制御可能として、有機デバイス物理・工学へと学術分野をさらに飛躍的に発展させること』に応えられるものとなる。来年度は計画の最終年度にあたるが、本研究では到達限界とされる測定技術・解析に挑戦し、その課題を克服して飛躍的な学術展開を図る手がかりを得たいと考えている。 その課題克服には、「エネルギーからの視点」というコンセプトを多面的に取り入れることが必要不可欠である。そして、有機デバイス中の電子や正孔の電子状態が実空間のキャリヤ挙動と対応して評価可能なシステムとする必要がある。その結果として、有機材料の分子軌道や電子準位を電子や正孔がどのように移動し、また、これらの軌道はどのようにキャリヤの占有によりエネルギー的変化をうけるかなど、キャリヤの実空間での挙動とともに明らかになる。また、マックスウェル静電気力の起源に双極子エネルギーに加えて4重極子が原因となるエネルギー構造を加えて研究することにより、渦状のドメインの謎に迫ることができる。本年度はこれらの課題を検討していく予定である。
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Research Products
(68 results)