2012 Fiscal Year Annual Research Report
画期的な海底鉱物資源としての含金属堆積物の包括的研究
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22226015
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 泰浩 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40221882)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩森 光 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (80221795)
中村 謙太郎 独立行政法人海洋研究開発機構, プレカンブリアンエコシステムラボラトリー, 研究員 (40512083)
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Project Period (FY) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | 海底鉱物資源 / 資源探査 / グローバル物質循環 |
Research Abstract |
今年度は,DSDP/ODPのコア試料が保管されている高知コアセンターに赴き,インド洋と太平洋のコア26本から全2,192試料の採取を行った.これらの試料について粉末X線回折装置(XRD)と蛍光X線分析装置(XRF),および誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いて,鉱物同定と全岩化学分析(主成分元素およびレアアースを含む微量元素)を行った結果,インド洋にも太平洋と同様に総レアアース濃度が1,000ppmに達するレアアース泥が存在することを確認することができた.しかし,このコアのレアアース泥は海底面下115mの深い位置に存在している.Site 213の堆積速度から過去の堆積場を復元した結果,中央インド洋海盆にはレアアース泥が表層に堆積している可能性が示唆される. それに加え,2013年1月21日~31日にかけて独立行政法人海洋研究開発機構 (JAMSTEC) と共同で南鳥島周辺海域の航海調査を立案・実行し,南鳥島南東約250kmの海域の6地点においてピストンコアを用いた試料採取を行った.航海終了後直ちに上記6地点から採取した7本のコア試料から約50cm間隔で試料を採取し,ICP-MSを用いた全岩化学組成分析を行った.その結果,総レアアース濃度が6,600ppmに達する超高濃度レアアース泥が海底面下2~4m程度に存在していることが明らかとなった.さらに,本航海では船に搭載された音響測深機であるサブボトムプロファイラーを用いることで,レアアース泥の出現深度を容易に把握することが可能であることが分かった.以上の結果は2013年3月21日にJAMSTECと東京大学で共同記者会見を行って公表し,国内外のメディアで大きく報道された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究代表者らは,2011年7月4日に発表したNature Geoscienceの論文によって,太平洋全域におけるレアアース泥の3次元分布を明らかにした.研究代表者らが発見したレアアース泥は資源として有利な特長をいくつも併せ持つ,まさに夢の海底鉱物資源であるといえる.本研究成果は国内だけではなく国外のメディアからも大きく報道され,その学術的なインパクトが極めて大きかったことを示している. また,平成23年度には日本EEZ内である南鳥島周辺海域にレアアース泥が存在していることを確認した.南鳥島のレアアース泥の総レアアース濃度は1,000ppmを超え,その資源量は日本の年間消費量の約230倍に相当する量であると推定される.しかし,南鳥島のコア試料は回収率が悪く,本数も少ないという問題点があったため,研究代表者らはJAMSTECと共同で南鳥島周辺海域の航海調査 (2013年1月21日~31日) を行い,これまでの常識を覆すような総レアアース含有量6,600ppmに達する超高濃度レアアース泥を発見し,さらにこの超高濃度泥は海底面下2~4mの浅い深度に存在していることが明らかとなった.こうした研究代表者らの研究成果について自由民主党や東京都庁は強い関心を示しており,2013年2月20日にはJOGMEC主催の「南鳥島海域のレアアース泥に関する勉強会」が開催された.また,平成25年度にはJAMSTECやJOGMECによる南鳥島の航海調査が複数回行われる予定である.さらに,研究代表者は三井海洋開発や東亜建設工業,太平洋セメント,IHIなどと実開発に向けた共同研究を展開しており,本研究は当初の予定以上に大きく進展していると言える. 以上のことから,本研究の当初の目的である「資源ポテンシャルマッピング」,「有望海域の選定」,「政策提言」については,予定以上の成果が見込まれていると断言できる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度及び平成26年度は,基本的には当初の研究計画・方法を踏襲し,研究を進展させていく予定である. まず,平成25年度は再びテキサスA&M大学に赴き,DSDP/ODPコア15本(試料数1,100個程度)を採取する.それに加えてJAMSTECとの共同研究で南鳥島海域での航海調査が2014年1月末に予定されている.これらの試料は速やかに粉末試料化し,スミアスライドおよびXRDによる基礎記載,XRFおよびICP-MSを用いた全岩化学分析を順次行う.また,平成23年度からは,放射光施設を用いてレアアース泥中のレアアースホスト相について詳細な検討を進めている.これも平成25年度以降継続して進展させていく予定である.さらに,南鳥島の超高濃度レアアース泥にもリーチング実験を行い,レアアースホスト相に含有されるレアアース量について詳細に検討していく. 平成26年度は,まず前年度までに確保された試料の基礎記載・分析を行い,データの蓄積を完了させる.蓄積したデータを用いて,太平洋全域におけるレアアース泥の3次元分布状況を明らかにし,資源ポテンシャルマッピングを完成させる.そして,開発に最適な有望海域の選定を行う.特に研究代表者らが発見した南鳥島EEZ内の超高濃度レアアース泥について集中して検討を行い,実開発に向けた開発エリアの選定を行う予定である.また,蓄積された膨大な地球化学データについては独立成分分析による解析を行い,最終的な解釈を行う.リーチング分析結果および放射光分析結果と組み合わせることで,レアアースがどのような起源物質や生成プロセスにより濃集しているのかを解明することで,レアアース泥を生み出す地球のダイナミクスを明らかにすることができると期待される.さらに,本研究で得られたデータや情報を政府機関や企業と共有することで,レアアース泥開発を実現させていきたいと考えている.
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Research Products
(26 results)
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[Journal Article] Elemental dissolution experiments of basaltic rocks with ultra-pure water at 340ºC and 40 MPa in a newly developed flow-type hydrothermal apparatus.2013
Author(s)
Kato, S., Shibuya, T., Nakamura, K., Suzuki, K., Rejishkumar, V. J., and Yamagishi, A.
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Journal Title
Geochemical Journal
Volume: 47
Pages: 89-92
Peer Reviewed
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[Journal Article] Discovery of a new hydrothermal vent based on an underwater, high-resolution geophysical survey2012
Author(s)
Nakamura, K., Toki, T., Mochizuki, N., Asada, M., Ishibashi, J., Nogi, Y., Yoshikawa, S., Miyazaki, J., and Okino, K.
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Journal Title
Deep-Sea Research Part I
Volume: 74
Pages: 1-10
Peer Reviewed
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[Presentation] Deciphering the chemical evolution of the Cenozoic seawater using ferromanganese crust2012
Author(s)
Nozaki, T., Goto, K., Tokumaru, A., Takaya, Y., Suzuki, K., Chang, Q., Kimura, J.-I., Kato, Y., Usui, A., Urabe, T. and NT09-02 Cruise Member
Organizer
Japan Geoscience Union Meeting
Place of Presentation
千葉,幕張メッセ
Year and Date
20120520-20120525
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