2013 Fiscal Year Annual Research Report
エピゲノム解析とエピ遺伝学による反復配列動態制御機構の解明
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22227001
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
角谷 徹仁 国立遺伝学研究所, 総合遺伝研究系, 教授 (20332174)
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Project Period (FY) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | DNAメチル化 / クロマチン / トランスポゾン |
Research Abstract |
(1)抑制クロマチンの目印であるヒストンH3リジン9のメチル化を除去する働きのある因子IBM1(increase in BONSAI methylation 1)の変異による効果をゲノムワイドに調べている。変異体の表現型解析から、IBM1タンパク質は転写される配列を標的にすることが示唆されていた(Inagaki et al 2010 EMBO J)。IBM1タンパク質の局在をゲノムワイドに調べたところ、実際に転写される配列に分布することがわかった(未発表)。また、ibm1による発生異常を抑圧する変異を複数得ており、特にその一つはIBM1とは別のヒストン脱メチル化酵素をコードし、DNAメチル化に影響せずに発生異常を抑圧した(未発表)。 (2)DNA低メチル化状態でコピー数の増加するシロイヌナズナのトランスポゾンを複数同定している(Tsukahara et al 2009 Nature)。このうちの一つVANDAL21のコードする因子がDNAメチル化の伴う抑制を解除する働きを持つことを示した(Fu et al EMBO J 2013)。またゲノムワイドのDNAメチル化解析の結果、この因子によるDNA脱メチル化はVANDAL21に類似したトランスポゾンに特異的におこることがわかった。しかしながら、この抗抑制タンパク質は他のVANDALトランスポゾンにもコードされている。このうちの一つを発現させることにより、やはり特異的な転写脱抑制が引き起こせた(未発表)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた研究は順調に進展している。これに加え、DNAメチル化の伴うトランスポゾン抑制に対抗してDNAメチル化と転写の脱抑制を行う因子を同定している。これは予想外の発見であり、この因子の作用機構を知るための研究を開始している。 また、遺伝子から、ヘテロクロマチンの目印を取り除く活性のなくなったibm1変異体においても正常な発生を行う新奇変異を同定した。これはヘテロクロマチンと個体発生の接点を理解するための材料になると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)VANDAL21のコードする抗サイレンシング因子の解析を行う。すでに、タグのついたトランスジーンで脱抑制活性を再現できているので、今後は、クロマチン免疫沈降によってゲノム中での局在を知るとともに、物理的に相互作用する因子を探索する。 (2)新奇ヒストン脱メチル化酵素遺伝子など、ibm1による発生異常を抑圧する変異を材料にゲノムワイドのクロマチン解析を行うとともに、それぞれの因子のゲノム上での分布を知る。 (3)上記の新たな研究について、材料は準備できているが、ゲノムワイド解析では研究費が律速となる。最終年度前年度の応募として、再構築した研究を申請している。
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