2011 Fiscal Year Annual Research Report
モノネガウイルス感染による宿主細胞応答ネットワークの解析
Project/Area Number |
22228005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
甲斐 知恵子 東京大学, 医科学研究所, 教授 (10167330)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 宏樹 東京大学, 医科学研究所, 助教 (50418654)
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Keywords | モノネガウイルス / モービリウイルス / 転写制御 / CAGE / 病原性 |
Research Abstract |
(-)一本鎖RNAウイルスは全身性の強い病態を生じさせ、高い致死率を示すものが多い。ウイルスを標的とした数多くの研究にも関わらず、未だにウイルス感染症の克服には至っていない。我々のこれまでの研究から、同種のウイルスでも病原性の違いや細胞の種類によって、感染後に誘発される遺伝子発現動態に違いが生ずるという結果を得ている。 本研究では、牛疫ウイルスを中心としたモービリウイルスとニパウイルスについて、感染に起因する宿主細胞応答の転写制御ネットワークおよび蛋白相互作用を、最近著しく進展した技術と情報統計学的手法を用いることによって体系的に明らかにする。さらに、組換えウイルス作出による解析もあわせ、ウイルスの病原性への宿主細胞応答の関与を明らかにすることを目的とする。 平成23年度は、アクセサリー蛋白欠損組換えウイルスを用いて、感染後の宿主遺伝子転写動態を転写因子の活性動態の変動として継時的に観察し、さらにこの結果を元に転写ネットワークを構築することに成功した。これら情報を元に、宿主転写制御に関与するアクセサリー蛋白が転写制御ネットワークの上流因子に作用する機序について研究を進めている。一方で、ウイルス蛋白に結合する宿主因子を同定し、さらに複数のウイルス蛋白が翻訳後修飾を受け、ウイルス増殖に有利な環境を作ることも明らかにした。これらの結果はモービリウイルスが持つ細胞種特異的な病原性発現機序の解明につながるものと考えられ、現在詳細な解析を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の一つの大きな目標であった、ウイルス感染後に生ずる転写制御ネットワークの全貌解明についてはほぼ達成できたと考える。また本研究を支えるための知見を集積するための基礎研究も概ね順調に進展し、特にウイルス増殖に対する蛋白修飾の関与機序に関しては予想以上の成果を複数得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られたウイルス感染後の転写ネットワークから最上位に位置する因子の同定を行ない、細胞種特異的な転写制御への関与を、関連するウイルス蛋白側との相互作用を中心に解明していく。 また、モービリウイルスの持つ持続感染化能についても宿主因子やウイルス蛋白翻訳後修飾を検索しそのメカニズムを明らかにする。 さらに、ニパウイルス感染後の転写制御ネットワークの解析にも着手し、モービリウイルスで得られた情報を応用し、動物種で異なる病原性の発現機序の解明を試みる。
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