2012 Fiscal Year Annual Research Report
モノネガウイルス感染による宿主細胞応答ネットワークの解析
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22228005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
甲斐 知恵子 東京大学, 医科学研究所, 教授 (10167330)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 宏樹 東京大学, 医科学研究所, 助教 (50418654)
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Project Period (FY) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | モノネガウイルス / モービリウイルス / 転写制御 / CAGE / 病原性 |
Research Abstract |
マイナス鎖一本鎖RNAウイルスは全身性の強い病態を生じさせ、高い致死率を示すものが多い。我々のこれまでの研究から、同種のウイルスでも病原性の違いや細胞の種類によって、感染後に誘発される遺伝子発現動態に違いが生ずるという結果を得ている。 本研究では、牛疫ウイルスを中心としたモービリウイルスとニパウイルスについて、感染に起因する宿主細胞応答の転写制御ネットワークおよび蛋白相互作用を、新技術と情報統計学的手法を用いて網羅的・体系的に解明することを目標とする。 昨年度までにウイルス感染後に生ずる広範な転写制御ネットワークの全貌解明についてほぼ達成できたことから、平成24年度はそれを元に転写ネットワークの再構築を行なった。感染初期に大きく活性が変動する転写因子群と、感染後期に転写活性が特異的に低下する転写因子群を選択し、ネットワーク内の関係性のベクトルを元に再構築を行った結果、感染後の宿主転写ネットワークは極めてシンプルな構造をとると考えられた。このネットワークのvalidationのためのin vitro試験を現在進めている。 また、昨年度までに明らかになったウイルス蛋白と宿主蛋白の相互作用について、その作用機序およびウイルス生活環における意義をさらに検索した。その結果、感染によって宿主蛋白の翻訳後修飾状態が変化し、宿主転写動態の変動を誘導する事が示唆された。加えて、ウイルス蛋白がこれまでの報告とは異なる翻訳後修飾を受け、それにより持続感染化が誘導されることを示唆する知見を得た。 一方で、持続感染による病態発現機序の解明のために、モービリウイルスに特徴的な核内封入体の成分であるN蛋白発現Tgマウスを作出し解析した。その結果、麻疹ウイルスN蛋白の高発現とともに筋萎縮が観察されるという興味深い結果を得た。どのようなメカニズムでこの現象が誘発されるか現在解析を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、本研究課題の目標の一つであったウイルス感染後の転写ネットワークの構築を達成することができた。この結果は、個々の遺伝子発現とそれを担う転写因子単体の活性を検索する従来の手法では解明できなかったものであり、転写制御の包括的解析における本解析法の優位性が示されたと考える。 また、ウイルス蛋白と宿主因子との相互作用を検索した結果、これまでの報告とは異なる蛋白の翻訳後修飾が、細胞側・ウイルス側両方にとって特徴的な役割を果たす事を明らかにした。これは当初の予定にはなかった大きな発見である。 また、本年度はモービリウイルスの持続感染成立機序と持続感染からの病態発現機序の両方から研究を進める事ができた。特に、Tgマウスを用いて一つのウイルス持続感染モデルを樹立し、特徴的な病変像を示すことを発見した。このことは麻疹ウイルスによる封入体形成の病態発現への関与を示した初の成果である。 全体として、当初の研究計画に加えて、これまでモービリウイルスおよびその近縁ウイルスでは全く報告のなかった宿主応答を明らかにし、またモービリウイルスの特徴的な病態への関与が強く示唆される現象を複数明らかにしたことから、おおむね順調に進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策に特段の変更はない。本研究課題の第一の目標であるウイルス感染後の転写ネットワークの作成および再構築を達成したことから、次年度はvalidationとしてこの同定された転写因子群の活性変動を模擬するために過剰発現系とノックダウン系を共に確立し、実際にウイルス感染後の細胞の転写動態を再現するかどうか、ウイルス感染後の遺伝子変動と比較・確認する。また、モービリウイルスは細胞種特異的な宿主応答を誘導することから、感染後の転写制御ネットワークの最上位に位置する転写因子群からのシグナルの伝達に差があると考えられる。そこで、標的細胞でのそれら転写因子の活性化動態を明らかにし、どのような差が最終的な下流の転写動態の大きな違いを生み出すかを明らかにする。さらにこれら因子群のウイルス感染後の蛋白修飾状態を検索し、細胞種特異的な宿主応答へどのように関与するかを明らかにする。 一方で、もう一つの大きな命題であるニパウイルスの転写制御ネットワークの解析に着手する。ニパウイルスは宿主であるヒト、ブタ、オオコウモリにおいてそれぞれ大きく異なる病原性や致死率を示すが、この要因について全く解明されていない。そこで、ゲノム情報の乏しいブタやオオコウモリをヒトと並列して解析するために、RNA-seq法を導入し、ウイルス感染後に細胞内で発現する全mRNA量の経時的変動を網羅的に測定する。差の見られた遺伝子についてアノテーションを行ない、各動物種でどのようなpathwayが転写制御を受けるかを明らかにする。一方、これまでラフデータしか存在しないオオコウモリゲノムの全解析を試み、遺伝子のアノテーションを行なうことで、コウモリゲノム情報のデータベース化を推進する。現在までにミトコンドリアDNAの解析は終了し、引き続きゲノムDNAの解析を進める予定である。
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[Presentation] Involvement of the leader sequence in Rinderpest virus pathogenesis2012
Author(s)
Nakamura, T., Imai, C., Fujita, K., Ishii, M., Iked, F., Sato, H., Yoneda, M. and Kai, C.
Organizer
The 11th Awaji International Forum on Infection and Immunity
Place of Presentation
Hyogo, Japan
Year and Date
20120911-20120914
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