2012 Fiscal Year Annual Research Report
クロトーファミリーの分子機能解明を基盤とした代謝の臓器相関に関する研究
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22229003
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Research Institution | Foundation for Biomedical Research and Innovation |
Principal Investigator |
鍋島 陽一 公益財団法人先端医療振興財団, 先端医療センター, センター長 (60108024)
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Project Period (FY) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | クロトー / FGF19 subfamily / 恒常性 / 生活習慣病 / 代謝制御 |
Research Abstract |
(1)全てのα-Klotho結合タンパク質がHNK-1抗体(GlcA-O-Gal-O-GalNAc-O---配列を認識)と共通に反応することを発見した。また、FGF23の特殊なO型糖鎖もグルクロン酸修飾されており、これらのグルクロン酸修飾された糖鎖をα-Klothoのグルクロン酸認識モチーフが認識、結合することを見いだし、「α-Klothoはβ-glycosidaseから進化したグルクロン酸を認識する新規のレクチンである」と結論した。(2)FGF23のO-GlycanT173はFGF23の腎臓への集積、α-Klothoの結合、生理的濃度でのシグナル伝達を担っていることを確認した。その機構としてO-GlycanT178糖鎖がα-Klothoに結合し、α-Klotho をFGF23と結合しやすい状態へとシフトさせることによりFGF23とα-Klothoの結合を促進、安定化させることを発見し、「タンパク間相互作用における糖鎖の新たな機能」を提唱した。(3)FGF23シグナル伝達の分子機構を示すモデルを構築した。FGF23はα-Klothoに効率よくトラップされ、腎臓に集積し、FGFR1と共にFGF23/α-Klotho/FGFR1複合体を形成する。2個のα-Klotho/FGF23複合体の4つのドメインがリングを作り、2分子のFGFR1を取り巻くことによってFGFR1を活性化し、シグナルを伝える。(4)α-Klothoと同様、β-KlothoもNa+,K+-ATPaseと複合体を形成、細胞外アミノ酸の低下に応答して、その細胞表面への移動が制御されることを見いだした。(5)顕著な蛋白分解の活性化がα-Klotho変異マウスの多彩な老化類似症状をもたらす要因であることを見いだし、阻害剤をα-Klotho変異マウスに投与し、多様な症状が顕著に改善することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は1遺伝子の変異が多彩な老化疾患類似の変異表現型を示すことにより老化研究に大きなインパクトを与えた研究を出発点としているが、その分子機構の解明により(1)カルシウム恒常性維持機構の理解の大きな進展、(2)グルクロン酸を認識する新規レクチンの発見、(3)タンパク間相互作用における糖鎖の新たな機能の発見など、特筆すべき成果が得られた。これらの成果は蛋白質科学・糖鎖科学に大きく貢献するものである。また、カルパインの活性制御が多様な加齢関連疾患克服の重要な創薬ターゲットであることを示し、加齢関連疾患の治療法開発に大きな手がかりを与えることとなった。更に血清FGF23濃度が高齢者、腎不全患者に見られる動脈硬化の重要なバイオマーカーであることを確認し、臨床的にも重要な成果を挙げることができた。これらの事実は、本研究計画が順調に進んでいることを示している。しかし、研究室の移転があったこともあって、研究成果の発信、論文発表に遅れがある(投稿中、準備中)。よって、一時的には停滞したものの、全体としては当初の目的に向かって概ね順調に進んでいると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
5課題の研究計画を以下に記載する。 課題1:α-Klothoとグルクロン酸修飾を受けたNa+,K+ATPase-β-subunitの結晶化を試み、構造解析へと発展させる。β-Klotho/Na+,K+ATPase複合体形成を担う糖鎖修飾構造を決定し、α-Klotho、β-Klothoの分子認識の特徴、共通性を明らかにする。課題2:α-Klotho、α-KlothoとFGF23の複合体の結晶構造解析を進め,FGF23のO型糖鎖がα-Klothoに結合することによって起こる構造変化を解明する。同様にβ-KlothoとFGF19の結晶構造を解明、α-Klotho、β-KlothoがFGF23、FGF19を仕分けて認識する機構を解明する。課題3:FGF21の組織特異的なシグナル伝達に機能する第3のKlotho様因子を同定し、複合体形成の分子機構、エネルギー代謝の臓器相関、ネットワーク制御制御に於ける役割を解析する。課題4:β-Klothoと多数の結合分子からなる複合体の機能を解析、摂取脂肪の低下に対する応答機構、アミノ酸代謝の新たな制御機構を解明する。課題5:経口投与が可能で安全性の高い阻害剤を入手し、創薬に結び付ける。
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Research Products
(8 results)