2010 Fiscal Year Annual Research Report
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22240036
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
重本 隆一 生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 教授 (20221294)
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Keywords | 左右非対称性 / 海馬 / シナプス / グルタミン酸受容体 / 空間学習 |
Research Abstract |
本研究は成体脳の左右非対称性がどのようにして形成されるのか、そのメカニズムと生理的意義を明らかにすることが目的である。3年間の研究期間中に、脳で左右非対称性に発現する分子を網羅的に明らかにし、左右非対称性を生じさせている分子メカニズムを明らかにし、これらの左右非対称性が空間記憶能に与える影響を遺伝子変異マウスを使って調べ、特にグルタミン酸受容体やシナプス形態の左右差の生理的意義を明らかにする。平成22年度は、新たに免疫系に関わる分子の欠損によって、海馬シナプスサイズの左右非対称性が失われることを明らかにした。また、空間記憶が形成される際にマウスの海馬で右側優位に活動依存性マーカーであるc-fosが発現誘導されること、この誘導が上記のシナプス左右差が失われているノックアウトマウスでは、消失することを見出した。さらに、分離脳マウスモデルとバーンズ迷路を使った空間記憶の行動実験により、ヒトと同様マウスでも空間記憶には右脳優位性があり右脳を主に使う動物の方がより正確に位置記憶の保持ができることを証明し論文として発表した。 今後は、脳の左右非対称性の形成に関わる分子をさらに芋づる式に明らかにし、それぞれの分子がどのようなカスケードを形成して、脳の左右差を生じさせるのか、またそれらの左右差が空間記憶以外にどのような生理的意義を持っているのかを、様々な行動指標をこれらの変異マウスで網羅的に調べ、脳の左右非対称性の生理的意義を明らかにする。
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