2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22240036
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
重本 隆一 生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 教授 (20221294)
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Keywords | 左右非対称性 / 海馬 / シナプス / グルタミン酸受容体 / 空間学習 |
Research Abstract |
本研究は成体脳の左右非対称性がどのようにして形成されるのか、そのメカニズムと生理的意義を明らかにすることが目的である。3年間の研究期間中に、脳で左右非対称性に発現する分子を網羅的に明らかにし、左右非対称性を生じさせている分子メカニズムを明らかにし、これらの左右非対称性が空間記憶能に与える影響を遺伝子変異マウスを使って調べ、特にグルタミン酸受容体やシナプス形態の左右差の生理的意義を明らかにする。平成23年度は、空間記憶が形成される際にマウスの海馬歯状回で右側優位に活動依存性マーカーであるc-fosが発現誘導されること、この誘導が内臓の左右非対称性がランダムとなるiv変異マウスでは、内臓の正位逆位に関わらず、歯状回で右側優位が保たれることを明らかにした。こあ結果はよく知られているiv変異以外にも脳の左右差を規定する遺伝因子が存在することを示している。またMHC classI分子の細胞膜上発現が失われるbeta macroglobulin ノックアウトマウスでは、シナプス左右差が消失することを見出した。 今後は、脳の左右非対称性の形成に関わる分子をin vitroでの培養海馬スライスを用いたアッセイ系を使って明らかにし、それぞれの分子がどのようなカスケードを形成して、脳の左右差を生じさせるのか、またそれらの左右差が空間記憶以外にどのような生理的意義を持っているのかを、様々な行動指標をこれらの変異マウスで網羅的に調べ、脳の左右非対称性の生理的意義を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MHCクラスIの細胞膜への発現が阻害されているbetamicrogloblinノックアウトマウスでシナプスサイズの左右差が消失していることを見出し、これらの分子がシナプス前後の認識を通じて入力依存性の非対称性を作り出していることが分かった。また、マウスで比較的簡便に空間記憶形成による右脳優位性を検出する方法を見出し、iv変異マウスにおいても右脳優位性が保たれていることを明らかにした。一方、発達段階から交連線維を失っている脳梁欠損変異マウスやin vitroスライス培養においては、シナプスサイズの左右差が消失していることを見出し、入力依存性の非対称性の形成に交連線維が必要であることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もiv変異とMHC classl関連の分子を検索し、入力依存性の左右非対称性が生じるメカニズムを明らかにしていく。また、空間記憶形成以外にも脳の機能的な左右差の指標となる行動を検索し、より広範囲な脳の非対称性の生理的意義について調べていく。問題点としては、いまだ入力依存性の左右非対称性が直接関与している行動指標が発見できていないことが挙げられる。分子メカニズムから見出される遺伝子変異マウスの行動をより網羅的に調べることで、生理的意義の発見に繋げていきたい。
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