2012 Fiscal Year Annual Research Report
成長円錐の新規分子マーカー群及び関連分子の機能・動態解析
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22240040
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
五十嵐 道弘 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50193173)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高雄 啓三 生理学研究所, 行動・代謝分子解析センター, 特任准教授 (80420397)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 成長円錐 / コンドロイチン硫酸 / 極性形成機構 / 小胞輸送 / アクチン繊維 / ノックアウトマウス / 行動解析 |
Research Abstract |
24年度について、以下の成果があった。 1. 成長円錐の新規極性形成機構:成長円錐のプロテオミクスから見出されたGPM6Aについて、極性形成の最初期に極性化することを見出した。大脳皮質の極性形成でこれを調べたところ、ラミニンの影響下には第二期をほとんど経由せず、軸索形成に入ること、この過程でM6BP, rap2, tiamなどの下流結合分子群が働くこと、これまで極性形成に関与するとの報告があった分子群よりもこれらの分子が先に集積することが見出された。これらの結果は、非常に新しい極性形成機構の原理を見出すことにつながったと考えられる。 2. 成長円錐の小胞運動機構:成長円錐の小胞輸送のうち、アクチン繊維依存性の運動を解析した。これらのうち、数が最も多い逆行性輸送小胞は、観察からアクチン重合機構と関係が深いことを見出した。またこれらはアクチン核形成のcomet tail 形成の関連連性が示唆された。 3. コンドロイチン硫酸(CS)の脳機能発達に関する影響:CS合成に関わる酵素の1つCSGalNAcT1 (T1)の遺伝子欠損(KOマウス)を作成・解析した。このマウスの脳内部位のCS減少は約30-50%であった。しかし、CS減少は脳全体では一様ではなく、集積している場所が非常に特異的に減少することが、組織化学的検討で明らかになった。またそのアイソフォームであるT2のKOは、ほとんど変化がなかったが、両方の交配ではDKO体は致死的であることが示された。 4. CS合成欠損マウスの行動異常:代表者五十嵐が作成した上記のT1-KO(hetero)を分担者高雄が解析した結果、脳の巨視的異常・微視的異常はさほど顕著でないにもかかわらず、社会的な行動の異常が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成長円錐のnGAPs関連ノックアウトマウス作成については、若干時間がかかったが、25年度に解析可能な状況までにマウス頭数を増やすことができた。成長円錐の小胞の挙動も画像情報処理がネックであったが、この問題をほぼ解決することができた。M6aに関する極性の研究は、予想外の発展を見せたため、種々の先行研究との関連性をおさえる研究を追加したが、これによって大きな新知見であることが確認できた。これはすでに試行しているin vivo極性解析を完了することで、25年度前半に論文投稿を企図している。全体に予想を超えた新規知見であったため、確証を得るために様々な実験を行う必要があり、若干の時間を要したが、研究の価値が大きく高まったため、順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は最終年度なので、さらに一層の効率的な研究推進を目指す。 1. 神経細胞の極性形成:大脳皮質神経細胞の極性形成に関して、in vivoでの遺伝子導入、RNAiなどを行い、過去の関連遺伝子群の効果と比較して、当教室で発見したシグナル伝達機構の意義と働いている時期を明確化する。 2. 成長円錐の小胞運動:アクチン依存性、微小管依存性の運動に関して、阻害剤の効果を明らかにする。またアクチン調節タンパク質、微小管調節タンパク質の効果を明確化する。 3. コンドロイチン硫酸と神経発生・発達・再生の関連性:神経発生の異常をDKOで具体的にCS減少量と関連付けて明らかにする。また脊髄損傷時の軸索再生の原理をさらに明らかにする。また可塑性と神経成長の共通原理を見出す結果を得る。
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