2013 Fiscal Year Annual Research Report
多点観察による身体活動・運動量、体力と健康事象に関する運動疫学研究
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22240073
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
熊谷 秋三 九州大学, 基幹教育院, 教授 (80145193)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長野 真弓 京都文教大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10237547)
畑山 知子 南山大学, 人文学部, 講師 (60432887)
清原 裕 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80161602)
米本 孝二 久留米大学, 付置研究所, 講師 (90398090)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 前向き研究 / 一般地域住民 / 勤労者 / 三軸加速度計 / 身体活動 / 座位行動 / 体力 / 認知症 |
Research Abstract |
①久山研究:65歳以上の高齢者を対象に17年間前向きに追跡し,5年間の運動習慣の継続性と全認知症,アルツハイマー病(AD)および脳血管性認知症(VD)発症との関係を検討した. 追跡開始5年前(1983年)および追跡開始時の運動習慣の有無に基づいて対象者を「運動なし」「運動開始」「運動中止」「運動継続」に分類し検討した結果、認知症発症およびADのハザード比は、運動継続群でのみ有意に低い値であった. ②大宰府・篠栗研究:認知症の疑いのない672名の地域在住高齢者を対象に,ベースライン時の客観的身体活動と2年後の認知機能との関連性を調査した.身体活動量は三軸加速度センサー内蔵の身体活動量計を用いて測定し,1.5メッツ以上の活動に対して一日あたりの総身体活動量(メッツ・時/日)を算出して評価した.認知機能は日本語版Montreal Cognitive Assessment(MoCA-J)得点を用いて評価した.交絡因子を調整した重回帰分析の結果,ベースライン時の総身体活動量と2年後のMoCA-J得点との間には有意な線形の関係は認められなかった. ③職域研究:勤労者を対象に加速度計によって測定した身体活動,座業時間と心血管代謝危険因子の関係を,2009年度から2012年度に実施した縦断研究の成績から検討した.多変量調整後,中高強度身体活動(3メッツ以上)は,いずれの危険因子とも有意な関係が認められなかった.ベースライン時点の座業時間(1.5メッツ以下)の長さと3年後の収縮期血圧,血糖,中性脂肪との間に有意な正の関連が認められた.さらに,多点で測定された座業時間の平均値も,血糖,中性脂肪と有意な正の関連が認められた.このことから,加速度計によって測定された座業時間は,1時点の測定であっても,多点の繰り返し測定値と同様に心血管代謝危険因子と関連することが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地域一般住民を対象とした久山研究において,握力と総死亡率,原因別死亡率に関する前向き研究のデータ解析の結果から,総死亡率およびガンを除く全ての原因別死亡率との間に有意な関連性があること,また両者にはほぼ有意な直線的な傾向性が観察された.また,運動習慣保有および運動習慣の長期継続もまた、認知症発症の有意な保護因子であった.また,久山町住民を対象に3軸加速度センサー内蔵の活動量計で評価された身体活動量および座位時間(ST)の評価を2009年に実施済みであるが,本調査は2012年にも同一者を対象にした繰り返し調査も行われており,3年後の実態調査の変化や諸身体活動量や座位時間の再現性に関しても検討を行う.地域在住高齢者(篠栗研究)では,ベースライン調査で加速度計による身体活動量およびSTとうつ症状や認知機能との有意な関連性が観察された.一方,ベーアラインの身体活動量と2年目の認知機能得点との間には有意な関連性が観察されなかった.今後は,2変量間の変化量間の関連性に関して解析を行う予定である.大宰府研究では, 既に2年間のデータセットが完成しており解析可能な状態にある.職域研究においては,2009年と2012年の健康診断を受診した287名であった.ベースライン時のSTを独立変数として重回帰分析を行い,3年後の健診項目との関連性を検討した結果,ベースライン時のSTは,フォローアップ時の拡張期血圧、中性脂肪(TG)、および空腹時血糖(FBG)との有意な関連性を示した. また,2009年から2012年の各年のSTの平均値を独立変数として解析を行なったところ,TGおよびFBGとの有意な関連が示された。このことから、勤労者において一日の座業時間が3年後の心血管・代謝性指標に影響することに加え,STの測定が一時点であっても,その後の代謝指標を予測することが可能であると考えられた.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的を達成するため,以下の研究課題の統計解析を行い,証拠に基づいた疫学研究の新たな方法論の提示を行うため報告書を作成する. 【トピックス】 2課題の検討を通して,身体活動,運動量および座位行動の主観的・客観的評価の妥当性および実態およびその変化の特性に関して検討を行う.課題①:勤労者および地域在住高齢者の身体活動量・座位時間(ST)および体力の経年変化.課題②:地域在住高齢者の身体活動量, STと体力との相互関係 【久山研究】(清原,熊谷)3課題の検討を通して,主として客観的な評価に基づく身体活動量,座位行動および握力の変化を暴露指標とした前向き研究の結果をベースライン調査1回での成績を比較検討する.課題①:三軸加速度センサー内蔵活動量計で客観的に評価された身体活動量,STの多点調査結果とメタボリックシンドロームとの関連性.課題②:5年間の運動習慣状況と認知症発症との関連性.課題③:握力の多点調査結果とメタボリックシンドロームとの関連性 【大宰府・篠栗研究】(畑山,長野)異なる2つのコホートを対象とした以下の2課題を通して,地域在住高齢者の認知機能の変化と客観的な評価に基づく身体活動量,座位行動および体力の変化との関連性をベースライン調査の結果と比較検討する.課題①:客観的に評価された身体活動量, STの繰り返し調査結果と認知機能,うつ症状との関連性.課題②:客観的に評価された体力の繰り返し調査結果と認知機能,うつ症状との関連性 【職域研究】(熊谷,米本)2課題を通して,勤労者の客観的に評価された身体活動量,座位時間と代謝指標およびうつ症状との関連性をベースライン調査の結果と比較検討する.課題①:客観的に評価された身体活動量, STの繰り返し調査と肥満、メタボリックシンドロームとの関連.課題②:客観的に評価された身体活動量,STの繰り返し調査とうつ症状との関連
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Normative data for the Montreal Cognitive Assessment (MoCA) in a Japanese community-dwelling older population.2013
Author(s)
Narazaki, K., Nofuji, Y., Honda, T., Matsuo, E., Yonemoto, K., and Kumagai, S
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Journal Title
Neuroepidemiol
Volume: 40
Pages: 23-29
Peer Reviewed
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