2012 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内膜系コンパートメントを介するがん増殖制御機構
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22240088
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡田 雅人 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (10177058)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 細胞増殖 / がん化 / リソソーム / MAPK / mTORC1 / オートファジー |
Research Abstract |
我々が新規に見いだしたリソソーム膜アダプター蛋白質p18の細胞増殖制御における役割解明を目指した研究を行った。p18はリソソームおよび後期エンドソームのラフトに限局して存在するアンカー分子であり、MAPK経路のMEK1およびmTORC1も活性化を担うRag GTPaseと複合体を形成することにより、それらの増殖シグナルを制御することが明らかになっている。これまでに、p18の欠損により細胞増殖能が著しく低下し、SrcやRasなどのがん遺伝子によるがん化に抵抗性を示すことを見いだしているが、本研究ではその分子機序の解析を行った。その結果、細胞周期制御に関わるCyclin Dやp27の発現制御に関わる転写因子FOXO3aの発現や安定性、および細胞内局在をp18-mTORC1が制御することを明らかにした。現在、FOXO3aの制御に関わるmTORC1の標的分子の同定を進めている。また一方で、p18-mTORC1がリソソームの成熟過程の制御を担うことを見いだした。線維芽細胞の解析から、p18欠損により一次リソソームと後期エンドソームの融合が阻害され、エンドサイトーシスにより取り込んだ物質の分解が遅滞することが観察された。また、表皮特異的なp18欠損マウスでは、リソソームを介するオートファゴソームやグリコゲンなどの生体物質の分解不全が生じ、その結果、角質層への終末分化が進行しないことが見いだされた。これらの結果から、リソソーム上のp18-mTORC1経路が、細胞増殖のみならずリソソームの機能制御にも重要な役割を果たすことが明らかとなり、リソソームが細胞の恒常性の制御する中心的なシグナルプラットフォームとして機能することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標であるがん増殖の制御機構解明に繋がる新たな経路として、リソソーム膜上のアダプター蛋白質p18を介するmTORC1-FOXO3a-p27/p21経路を初めて同定することに成功した。この経路の詳細を明らかにすることにより、細胞増殖制御機構の新しいメカニズムが提案できることが期待される。また一方で、p18経路がリソソームの機能制御、主に標的オルガネラなどとの融合の制御においてきわめて重要な役割を担うことも明らかにすることが出来た。現在、直接的なp18-mTORC1の標的分子の同定を進めているが、それに成功することにより、細胞の増殖のみならずエネルギー代謝などの細胞活動の根源的な制御におけるp18-mTORC1経路の役割が明らかになると思われる。以上の点より、本研究課題はおおむね順調に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
達成度の項目で示したように、重要課題として、1)p18-mTORC1がFOXO3aの発現や細胞内局在を制御するメカニズムの解析、特にFOXO3aの発現制御機構とリン酸化修飾を介在するキナーゼの同定、及び、2)リソソームと他のオルガネラとの融合現象の制御に関わるp18-mTORC1の標的分子の同定と機能解析が残されている。今後は、これらの解析に焦点を絞って研究を推進する予定である。
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Research Products
(9 results)