2011 Fiscal Year Annual Research Report
アイスコアに刻まれた十~千年スケールの宇宙線強度変動と地球環境変動
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22241003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松崎 浩之 東京大学, 大学院・工系研究科, 准教授 (60313194)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹 公和 筑波大学, 数理物質科学研究科, 准教授 (20312796)
堀内 一穂 弘前大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (00344614)
柴田 康行 国立環境研究所, 化学環境領域, 領域長 (80154251)
村松 康行 学習院大学, 理学部, 教授 (70166304)
本山 秀明 国立極地研究所, 教育研究系, 教授 (20210099)
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Keywords | 宇宙線イベント / 環境変動 / 古気候 / アイスコア / 加速器質量分析 / 宇宙線生成核種 / ベリリウム10 / 塩素36 |
Research Abstract |
過去の地球環境変動を示す指標として重要な宇宙線生成核種のうち、^<10>Beは大気で生成した後地球表層環境に移行するまでのタイムラグが小さいため、暦年較正のためのデータベースとしてよく調べられている^<14>Cに比べても、宇宙線強度変動をよりダイレクトに反映すると考えられる。本研究では、南極ドームふじより採取された過去72万年間をカバーするアイスコア試料中の^<10>Beの変動を調べてきた。平成23年度も系統的な分析を積み重ね、アイスコアの全長にわたり、1000年間隔での測定をほぼ完了した。最も特筆すべき成果は、昨年度の約11.4万年前のブレークイベントと呼ばれる地磁気変動イベントに加え、4.1万年前のラシャンプイベント、18.9万年前のアイスランドベイズンイベントにおいても、明確な^<10)Beのピークを確認したことである。あわせて、これらのイベントを含む過去30万年間の^<10>Be濃度(フラックス)変動の詳細解析により、^<10>Beが地球磁場の変動に由来する宇宙線強度変動を極めて詳細に記録していることが分かった。つまり、南極アイスコア中の^<10>Beの変動は、グローバルなイベントの記録となっていることがほぼ証明された。これまで、地球古環境研究にもっとも広く用いられていた年代指標としては、海底堆積物などの古地磁気があったが、堆積後磁化が固定するまでのタイムラグの問題など、不確定要因もあった。これに対して、アイスコア中の^<10>Beの記録が、年代層序学的な新たな指標となる可能性があり、古地磁気記録と相補的に、より信頼性の高い年代指標を確立する道が拓けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年3月11日の東日本大震災の影響で、まず、筑波大学の加速器が壊滅し、^<36>Clの分析は完全に停止してしまった。そのため、急遽東京大学の加速器にて^<36>Clの測定を行うべく、開発実験を繰り返したが、日サンプルの測定には至っていない。東京大学の加速器についても、電力使用制限のため、十分なマシンタイムが得られなかったが、厳選した^<10>Beの試料を測定し、研究実績の概要に示したように、かなり明快な成果を得ることができた。研究進捗の観点から総合的に判断すれば、順調に成果を挙げていると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
筑波大学の加速器が使用不可能となったので、^<36>Cl-AMSを東京大学で行うこととした。平成23年度中に実用利用のための開発実験を行ったが、検出器の最適化が未了であり、平成24年度の早い段階で完遂し、その後は日サンプルを測定し、^<10>Beで得られた宇宙線強度変動の歴史をより正確なものとする。研究の核心としては、アイスランドベイズンイベントの詳細な分析を中心に、いくつかのイベントについて^<10>Beの系統的な分析を継続し、信頼度・精度を向上させる。また、論文等の具体的な成果を出す。
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Research Products
(6 results)