2011 Fiscal Year Annual Research Report
大陸氷床の出現初期における海洋循環:岩石磁気学的な新視点に基づく高精度解析
Project/Area Number |
22241006
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大野 正夫 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 准教授 (00251413)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 辰弥 国立科学博物館, 地学研究部, 非常勤研究員 (80571132)
桑原 義博 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (90281196)
北 逸郎 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (10143075)
狩野 彰宏 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (60231263)
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Keywords | 岩石磁気 / 古環境 / 海洋循環 / 大陸氷床 / 磁気ヒステリシス |
Research Abstract |
今年度はMIS(海洋酸素同位体ステージ)100の氷期に当たる深度の分析を進めた。まず2cm毎に採取した7ccのキューブ試料の帯磁率の異方性を測定したのち、キューブ内の堆積物を凍結乾燥してその磁気ヒステリシス測定を行った。この測定は、本研究の設備備品費で昨年度購入した交番磁場勾配磁力計で行った。また、凍結乾燥した試料の一部は、X線分析による鉱物組成の分析と、粗粒成分(>150μm)を抽出してIRD(氷床由来の漂流岩屑)量のカウントを行った。さらに堆積物中のナンノ化石の分析を行った。また本研究の設備備品費で今年度購入した走査型電子顕微鏡(SEM)を設置、立ち上げて、研究試料の堆積物構成物を確認した。 磁気ヒステリシス測定の結果、MIS100の間、IRDの到来に伴うMr/Ms(飽和残留磁化/飽和磁化)の減少が繰り返し見られた。このMr/Msの減少は、アイスランド近海で形成される深層流が弱まってSite U1314へのoceanic basalt起源の流入が減り、continetal rock起源の流入の割合が増えたためと解釈できる。X線分析による鉱物組成の変動もこれを支持する。一方で、Snowball and Moros(2003)が最終氷期のコア試料のMr/Msの変動を解釈したように、Mr/Msの変動を磁性鉱物の粒子サイズの変動と考えてこれを深層流の流速変動で解釈すると、IRDの到来の際に流速が増加することになり、上述したのとは逆の結果となる。この点については今後、さらに検討して確かめたい。また、帯磁率の異方性からは、北からの流れが卓越し、東からの流れもあることが示され、そのうちでも東からの流れはMr/Msの小さい期間により顕著であるとの結果が得られた。今後、分析範囲をMIS100の前後に広げ、北半球の大陸氷床発達時における海洋循環の変遷史を明らかにしてゆく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、新たに導入を申請した主たる実験装置について、設置・立上げを終え、分析に取りかかった。また、全ての分析区間のうちで最も注目している年代区間について、岩石磁気分析、漂流岩屑のカウントなど主たる分析が終了した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従い、分析範囲をMIS100の前後に広げ、北半球の大陸氷床発達時における海洋循環の変遷史を明らかにしてゆく予定である。また、「研究実績の概要」で述べた、Mr/Msの変動に関する2つの相反する解釈について、堆積物の粒子サイズを分析するなど、更なる分析を行って検討していく予定である。
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