2012 Fiscal Year Annual Research Report
大陸氷床の出現初期における海洋循環:岩石磁気学的な新視点に基づく高精度解析
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22241006
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大野 正夫 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 准教授 (00251413)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北 逸郎 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 教授 (10143075)
林 辰弥 独立行政法人国立科学博物館, その他部局等, その他 (80571132)
桑原 義博 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 准教授 (90281196)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 岩石磁気 / 古環境 / 海洋循環 / 大陸氷床 / 磁気ヒステリシス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では、昨年度に引き続き、MIS(海洋酸素同位体ステージ)100前後の試料の各種分析(岩石磁気分析、ナンノ化石分析、化学同位体分析、鉱物分析、漂流岩屑(IRD)分析)を行った。特に、これまでに得られた岩石磁気パラメーターの変動が、磁性鉱物の粒子サイズや化学組成などのどのような変動によるものかを見極めるため、高温および低温の岩石磁気測定実験を行った。 本研究に用いた試料の掘削地点は、アイスランドの南方に位置し、アイスランド周辺の海底から深層流によって運ばれてきた陸源の砕屑物を多く含む。同地点の完新世の堆積物の熱磁気分析の結果は、キュリー点が580~600℃のリバーシブルな曲線を描いており、チタンに乏しいマグネタイトが卓越することを示している。これに対し、本研究で注目している2~3Maの堆積物の熱磁気分析では、真空中の加熱曲線の250℃付近にくぼみがあり、また、冷却曲線が加熱曲線を上回ることから、マグネタイトが卓越するものの他の磁性鉱物が混入していることが示唆される。なかでもMIS 101および99の間氷期では、MIS 100の氷期に比べてMr/Ms(飽和残留磁化/飽和磁化)が大きく、また間氷期の堆積物のほうが氷期の堆積物に比べて熱磁気分析における加熱曲線の250℃付近のくぼみがやや明瞭になる傾向がある。間氷期の堆積物について温度を段階的に上げながら過熱・冷却を繰り返す段階的熱磁気分析を行なったところ、300℃付近までは熱磁気曲線はほぼリバーシブルであり、その後さらに加熱すると変質が進むことが判った。これらのことからこの堆積物には、250℃付近にキュリー点を持つ成分の存在が示唆される。 今後これらの結果の解釈について議論を進めるとともに、分析範囲をさらに広げて、北半球の大陸氷床発達時における海洋循環の変遷史を明らかにしてゆく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分析区間のうちで最も注目している年代区間について、全ての項目の分析(岩石磁気分析、ナンノ化石分析、化学同位体分析、鉱物分析、漂流岩屑(IRD)分析)が終了した。さらにこれらの結果の解釈のため、熱磁気分析等の実験を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従い、分析範囲をMIS100の前後に広げ、北半球の大陸氷床発達時における海洋循環の変遷史を明らかにしてゆく予定である。また、これまでに得られた種々のパラメーターの変動の解釈のため、低温磁気分析や堆積物の粒子サイズの分析など、更なる分析を行って検討していく予定である。
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