2013 Fiscal Year Annual Research Report
大陸氷床の出現初期における海洋循環:岩石磁気学的な新視点に基づく高精度解析
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22241006
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大野 正夫 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 准教授 (00251413)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北 逸郎 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 教授 (10143075)
桑原 義博 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 准教授 (90281196)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 岩石磁気 / 古環境 / 海洋循環 / 大陸氷床 / 磁気ヒステリシス |
Research Abstract |
本年度の研究では、昨年度から分析範囲を大きく広げ、2.2~2.7Maの間の試料の各種分析(岩石磁気分析、ナンノ化石分析、化学同位体分析、鉱物分析、漂流岩屑(IRD)分析)を行った。特に、岩石磁気記録の解析から、氷期―間氷期サイクルおよび数千年スケールの深層水の変動を明らかにした。 本研究に用いた試料の掘削地点は、アイスランドの南方およそ千キロメートルに位置し、アイスランド周辺の海底から深層流によって運ばれてきた陸源の砕屑物を多く含む。さまざまな岩石磁気測定(磁気ヒステリシス、S-ratio、等温残留磁化(IRM)獲得曲線)の結果、堆積物中の磁性鉱物の保磁力が小さいながら有意な変動を示すことが明らかになった。保磁力は間氷期に比べて氷期には小さく、特にIRD(氷床由来の漂流岩屑)の増加に伴って急激な減少を示す。この変化の原因を明らかにするため、IRM獲得曲線から求めた保磁力分布を解析したところ、解析期間を通じて保磁力分布の変化は、保磁力の最も大きい試料(間氷期成分)と最も小さい試料(氷期成分)を端成分として、この二つの端成分の混合で説明できることが明らかになった。間氷期に卓越する保磁力の大きい成分は、ノルウェー海で形成された北大西洋深層水が、細粒の磁性鉱物を含むアイスランド周辺の玄武岩を起源とする物質を運んできたもので、一方、氷期に卓越する保磁力の小さい成分は、南極大陸の沿岸海域で形成され北上してきた底層水が粗粒の磁性鉱物を含む大陸の花崗岩起源の物質を運んできたと解釈できる。従って堆積物の保磁力は北からの流れと南からの流れの強弱の変化に応じて変動し、海洋大循環の変動において重要な役割を担う北大西洋深層水形成の活発さを反映していると考えられる。このような変動が北半球の大陸氷床発達期において見られたことは、現在と同様の海洋システムがこの時期においてすでに成立していたことを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分析範囲を大きく広げ、研究対象の年代区間の大部分について、氷期―間氷期サイクルの時間分解能で、全ての項目の分析(岩石磁気分析、ナンノ化石分析、化学同位体分析、鉱物分析、漂流岩屑(IRD)分析)が終了した。さらにこれまでに得られた、氷期―間氷期サイクルおよび数千年スケールの両方の変動について、深層流の変動で整合的に解釈できることが明らかになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従い、数千年スケールの分解能での分析範囲を拡大し、北半球の大陸氷床発達時における海洋循環の変遷史を明らかにしてゆく予定である。また、その結果を最終氷期の変動と比較してその違いを明確にすることで、海洋循環変動の根本にあるメカニズムを明らかにしていく予定である。
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