2011 Fiscal Year Annual Research Report
細胞間・細胞内ネットワークに注目した環境汚染物質によるアレルギー増悪機構の解明
Project/Area Number |
22241015
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高野 裕久 京都大学, 工学研究科, 教授 (60281698)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 英子 独立行政法人国立環境研究所, 環境健康研究センター, 主任研究員 (60353538)
柳澤 利枝 環境調査研究所国立水俣病総合研究センター, 基礎研究部, 主任研究員 (70391167)
井上 健一郎 北里大学, 薬学部, 教授 (20373219)
|
Keywords | 細胞間ネットワーク / 細胞内ネットワーク / 環境汚染物質 / アレルギー / メカニズム |
Research Abstract |
本研究では、疫学や動物モデルを用いたこれまでの研究によりアレルギー疾患を増悪することが明らかにされている環境汚染物質を主対象とし、アレルギー増悪影響においてkey roleを担っている免疫担当細胞および細胞内分子とそのネットワークを明らかにすることを目的としている。複数の免疫担当細胞が存在するマウスの脾細胞を使用し、MACS Microbeadsを用いた細胞分離法により、特定のT細胞や抗原提示細胞(B細胞、マクロファージ、樹状細胞)を単離または除去した後、実験に使用した。これまでに、大気中微小粒子等に含有されるベンゾ[a]ピレン(BaP)の影響について検討し、分離前の脾細胞に対するT細胞活性化作用に比べて、B細胞やマクロファージを除去した細胞群や単離T細胞ではその作用が弱まったことから、抗原提示細胞とT細胞の相互作用による影響の増強効果の存在を見出している。 本年度は、プラスチックの可塑剤であるフタル酸エステル(フタル酸ジエチルヘキシルとフタル酸ジイソノニル)を評価対象とした。T細胞および抗原提示細胞(B細胞、マクロファージ、樹状細胞)を単離または除去した各細胞群を、フタル酸エステルに曝露した後、T細胞の活性化マーカー分子(TCR,CD3,CD69)、抗原提示細胞の活性化マーカー分子(MHC class II, CD86)の発現の変化を検討した。その結果、フタル酸エステル曝露による脾細胞中のTCRやCD69陽性細胞率の増加は、B細胞またはマクロファージの除去によりあるいは単離T細胞では低減されたが、樹状細胞の除去による低減は認められなかった。一方、フタル酸エステル曝露による脾細胞中のCD86陽性細胞率の増加は、T細胞を除去しても観察され、単離したB細胞、マクロファージ、樹状細胞においても増加が認められた。これより、BaPと同様に、フタル酸エステル曝露によるT細胞の活性化にはB細胞やマクロファージなどの抗原提示細胞を介した相互作用が重要であり、抗原提示細胞の活性化には直接的な作用が大きい可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、「『疫学や動物モデルを用いたこれまでの研究によりアレルギー疾患を増悪することが既に明らかにされている環境汚染物質』を主たる対象とし、アレルギー増悪作用のメカニズムをアトピー動物とその免疫担当細胞を用いて解明する。特に、アレルギー増悪影響においてkey roleを担っている免疫担当細胞とそのネットワーク、及び、細胞内分子とそのネットワークを系統的に解析し、絞り込み、明らかにする。」ことを目的とし、それに沿った計画を立案し、研究を進めている。抗原提示細胞(特に、B細胞、マクロファージ)とT細胞の相互作用による影響増強効果(免疫担当細胞間ネットワーク)の存在等を明らかにすることができ、おおむね順調に進展していると、自己点検、評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、化学物質による増悪影響の作用点・機序を明らかにするため、シグナル伝達系や核内レセプターの関与等について検討を加える予定とする。また、化学物質が骨髄由来樹状細胞に及ぼす影響について、サブセット解析等を行う予定とする。加えて、化学物質や粒子状物質が抗原提示細胞の抗原の取り込みやその後の作用等に及ぼす影響についても検討を加える予定とする。
|