2011 Fiscal Year Annual Research Report
コンパクトX線1分子計測装置の実現と複合計測法開発
Project/Area Number |
22241032
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 裕次 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (30344401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
一柳 光平 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教 (70435618)
関口 博史 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特任助教 (00401563)
八木 直人 財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 副部門長 (80133940)
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Keywords | X線 / 1分子計測 / X線集光 / 分子内運動 |
Research Abstract |
現在1分子計測が可能な方法論の中で、唯一の分子内部運動を高速高精度に計測可能なX線1分子追跡法(Diffracted X-ray Tracking ; DXT)を多くのユーザーに提供できる技術的な高度化を進めるのが本研究の最終目的である。今年度はSPring-8のBL28B2に特注設計したX線トロイダルミラーを設置し、DXTで得られるナノ結晶からの回折斑点の飛躍的なS/N向上を達成しルーチン的にDXT測定できるまでに完成させた。作製したX線トロイダルミラーの大まかなスペックは、光源-ミラー間距離43m、ミラー-サンプル間距離6m、Rhコート、カットオフエネルギー18keVで、実際の測定結果としては、Ray-trace結果の予測通り斜入射角3.4mrad、ミラー長1mにおいて、縦幅100μm(横幅150μm)以下の集光を達成し、36msでのDXT測定を実現した。今まで使用していたBL40XUでのDXT測定に比べてθ方向で約3倍の運動幅を計測できた。予想以上に幅の広い運動を計測可能になったことで、分子内運動の特性が小さくて速いモードに関してはBL40XUの測定で、運動の幅が広くてゆっくりした運動は、本ビームラインでの測定が最適というBL使用上の棲み分けを明確化することができた。問題点としては以下の点がある。本研究テーマ予算で購入したPILATUS100K(RIGAKU)では、ピクセルサイズは172×172μm^2で487×487pixels(受光面積:83.8×33.5mm^2)となっており、これまで用いた高速CCDより受光面積が小さいのでX線のダイレクトビームを除いたX線回折像のみ動画計測を予定していた。しかし、この上記運動検出幅をはるかに超えたH23年度の本実験結果はPILATUSの当初用途に今のところ一致しない。よりカメラ長を短くした条件での利用法をH24年度の最終的な評価実施を行わなければならない。通常のCCDカメラと比べてX線の検出効率(8keV, 99%)と高いダイナミックレンジ(20bit)を持っているPILATUSを短いカメラ長で利用することは、36msよりも短い計測も可能にするかもしないという予想外の成果を導き出すかもしれない。期待したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
H22はX線集光ミラーの完成が少々遅れていたが、予想以上の集光能力を持っていることが評価できたので、予定よりも高速のX線1分子計測が可能になってきた。H24の実践的なDXT計測が楽しみである。
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Strategy for Future Research Activity |
配分された予算額の関係で、本研究テーマである「コンパクトX線1分子計測装置の実現と複合計測法開発」における最終目標は若干の方向修正を余儀なくされた。しかし、今まで測定できなかったビームラインでのX線1分子計測が可能になり、従来利用していたビームラインでは不可能な運動特性をモニターできる可能性が出てきたことは、予想外で、この特徴を生かしたサンプル系での成果を最後の一年で出していく予定である。
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Research Products
(3 results)