2010 Fiscal Year Annual Research Report
半導体ヘテロ構造中の量子準位間遷移とテラヘルツ共振器輻射場の超強結合の物理と応用
Project/Area Number |
22241036
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平川 一彦 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (10183097)
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Keywords | 量子効果 / 微小共振器 / サブバンド間遷移 / テラヘルツ / 半導体超格子 / ブロッホ振動 |
Research Abstract |
半導体量子構造中で起こる量子準位間やワニエ・シュタルク準位間のサブバンド間遷移を、共振器構造により強く閉じ込めたテラヘルツ電磁波により制御し、新しい物性を見いだすのが本研究の目的である。本年度は、半導体量子構造と相互作用するTMモードのテラヘルツ電磁波を閉じ込めるための、フォトニック結晶微小共振器の設計と初期的な実験を行った。 まず、フォトニック結晶微小共振器の実現に不可欠なテラヘルツ帯TM偏光に対するフォトニックバンドギャップ構造を、フォトニック結晶表面電極を用いて実現した。また、フォトニック結晶中に組み込まれた半導体超格子からのテラヘルツ発光をテラヘルツ時間分解分光法で調べることでフォトニックバンドギャップの形成を検証した。特に、バイアス電圧印加のための半透明Ti電極を超格子とフォトニック結晶電極の間に挿入したところ、Ti層の面伝導率の最適化によって、高い消光比を持つ明瞭なテラヘルツ帯TM偏光に対するフォトニックバンドギャップを得ることに成功した。 さらに、超高Q値-体積比を有するフォトニック結晶微小共振器を金属/半導体コア/金属導波路と三角格子フォトニック結晶電極を組み合わせた構造において設計した。まずフォトニック結晶電極に設ける孔の大きさと半導体コアの厚みを制御することでフォトニックバンドギャップを実現した。また共振器のQ値は、金属への表面侵入による伝導損失とバンドギャップによる漏れ損失への抑制効果のバランスにより決まることを明らかにし、さらに半導体コアの厚み制御によりQ値を最大化した。また、設計した構造は既存の微小共振器構造と比較して1/10も小さなモード体積をもつ共振器であり、ブロッホ発振器の実現に最適であるだけでなく、既存のテラヘルツレーザに応用することで駆動電力を1-2桁下げることが期待される。 また本年度は、半導体量子構造のサブバンド間遷移やフォトニック結晶構造の評価に有用なフーリエ分光装置を導入した。
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Research Products
(10 results)