2011 Fiscal Year Annual Research Report
個人情報保護に対応した犯罪被害調査の開発に関する研究
Project/Area Number |
22243006
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
津島 昌弘 龍谷大学, 社会学部, 教授 (60330023)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜井 浩一 龍谷大学, 法務研究科, 教授 (60373106)
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Keywords | 犯罪学 / 社会調査法 / 被害者学 / 刑事政策 |
Research Abstract |
本研究の目的は、現代社会に対応した新たな犯罪被害調査を開発すること(ネット調査の可能性)、さらに、住民の犯罪不安や刑事司法機関にたいする意識などについての情報を収集し、それらを検証することである。そして最終的には、科学的根拠に基づいた刑事政策の基盤となる統計資料を提供することにある。本研究は、(1)調査の実施方法・調査媒体に関する研究、(2)調査の実施および結果の比較(訪問留置法とネット調査、本調査とEUのESS[欧州社会調査]との比較)、(3)犯罪被害調査のあり方についての検討・成果の公表、の3段階で実施する。本年度は3年計画の2年目にあたり、(2)を遂行した。 以下に、研究の遂行および成果を具体的に報告する。 2011年4月から7月にわたり「犯罪被害などに関する調査」(訪問留置調査およびネット調査)を実施した。その後、データセットを作成し、その分析を行った(分析は現在も継続中)。主たる結果は次のとおりである。(1)犯罪被害率はおおむね減少傾向にあり、体感治安においても改善が認められる(2)EU諸国との比較から、日本は刑事司法にたいする信頼において低い水準にあるが、法律遵守は高い水準にある(3)訪問留置調査とネット調査との比較から、犯罪被害率のような生起確率(数%の小さな差異)を測定するツールとして、ネット調査を訪問留置調査の代替として使用することは適切でない、ただし、犯罪不安などの意識調査においては、訪問調査の代替として使用することの可能性が示唆された。これらの結果は、2011年8月の国際犯罪学会(神戸)、11月のアメリカ犯罪学会(ワシントン)など国内外の関連学会において発表した。12月にはプレスリリースを使って、研究成果を公表するとともに、結果にもとづいた各種提言を行った。 2012年3月には、刑事司法にたいする信頼について情報収集を行うため、「高信頼社会」として知られるノルウェーに出張し、現地有識者にたいして聞き取りを実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主目的である犯罪被害調査の開発(ネット調査の可能性)および刑事司法機関にたいする意識におけるEU諸国との比較分析は、おおよそ計画通りに進み、成果をあげつつある。他方、日本国内における犯罪不安や刑事司法にたいする信頼などの形成メカニズムを解明する作業はいまだ本格的には着手しておらず、今後、連携研究者と協働して早急に対応する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年にあたる本年度は、調査結果についての検討および成果の公表にウェイトを置いて、事業を進めていく。まず、連携研究者との研究会を開き、進捗状況(とくに犯罪不安や刑事司法にたいする信頼などの形成メカニズムの分析作業の経過)を確認する。そして、各々の研究結果を共有し、報告書作成をはじめとした今後の公表のあり方について打ち合わせを行う。個々の研究成果はこれから順次、学会報告や学術論文で公表していく。また、2013年3月には海外から当該分野の研究者を招いて、国際シンポジウムを開催する予定である。
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Research Products
(6 results)